『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』小谷みどり

小谷みどりさんから最新作 『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(岩波新書) が送られてきた。 すごい本だ! 最新の葬送事情が歴史的社会的背景も踏まえ、また確かな情報分析力で描出されている。 この本読まずに葬送を語るなかれ、だ。 「火葬場が足りない?」という表面的にいかにも通の人たちの間違い 神奈川県横須賀市。大和市等の自治体で取り組んでいる話題のエンディングサポート事業 「墓じまい」が話題となっているが顕著に増加する無縁墓 こうした旬の問題だけではない。 ここに取り上げられていない問題はないくらいだ... 続きを読む

僕はあなたの息子でした―個から見た死と葬送(27)

これを書いたのは2年半ほど前のことである。今も父の死は鮮明である。遺骨の一部は今も私の引き出しに入れてある。 父は晩年、よく「危篤だ」と自分で電話をかけてきた。 兄には別な日に「危篤」になったようだ。 要は「顔を見せろ」ということだ。 行くと息子の顔をまじまじとみつめ、「僕が死んだらどうするか言ってみろ」と言うのだ。 自分の意思が息子に伝わっているか、確認をするのだ。 危篤になった時のことから始まり、葬式や納骨、そして自分の書斎の本の行く末まで、全部を、私が父からそれまで何度も聞かされたとおりに言うと、「... 続きを読む

遠くなる母とその死―個から見た死と葬送(25)

携帯電話が鳴った。22時15分。 「高倉和夫さんですね。林病院の看護師の及川と申します。お母様の芳子さんが危篤になられましたのでご連絡します」 すぐに病院に車を走らせた。 ひどく落ち着いている自分がいた。 母は4人部屋から個室に動かされていた。 「高倉さんですね。こちらへどうぞ」 病室では若い医師がモニターを見ていた。というより私が来るのを待っていたかのようだ。モニターの線はもうなだらかであった。 「22時55分、ご臨終です」 と医師は言い、立って私に頭を下げた。 母の手を握ってみたが、ダラーンとしてい... 続きを読む

死亡数 人口動態統計と人口推計2006年版、2012年版、2017年版の比較

国立社会保障・人口問題研究所は、平成27年国勢調査の確定数が公表されたことを受けて、これを出発点とする新たな全国人口推計(日本の将来推計人口)を行い、 平成29(2017)年4月10日にその結果を公表。http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp 『四訂葬儀概論』(4月1日発行)にはギリギリ間に合わなかったのは残念。そこで死亡数についてのみ出生中位・死亡中位の推計を2006年版推計、2012年版推計と合わせて対照比較でき... 続きを読む

遺族の肖像・東日本大震災アーカイブ⑥

◎遺族の肖像―3・11の被災者   ■「記憶がゴチャゴチャ」している被災者   女川町から転出した人たちだけではなく、残った人たちもさまざまな転変をよぎなくされた。 ほとんどが犠牲者と何らかの関係があった人たちである。精神的に大きな打撃を受けたことに加えて環境の大きな変化を受けた。それがそれぞれにさまざまな変化を強いた。 「復興」といっても、それは女川町の人々を大震災以前に戻すことではない。 家族、親族、隣人、知人の喪失、暮らしの環境の激変…これらは戻ることはない事実である。喪失、激... 続きを読む