若者が町を出ていく・東日本大震災アーカイブ③―個から見た死と葬送(23)

2011年の大震災から6年。福島県の避難指示解除が進んでいるが、戻ったのは13.1%という。 朝日新聞2017年3月6日記事によると、 東京電力福島第一原発事故の発生で、福島県内の11市町村に出された国の避難指示。この春、4町村、約3.2万人に対する避難指示が解除される。避難を強いられた地域は6年前の約3割の面積にまで縮小する。ただ、帰還は進まず、自主避難した住民もおり、全国にはなお8万人近い避難者が暮らしている。(略)ただ、すでに避難指示が解除された区域でも、実際に戻った住民の割合(帰還率)は平均で13... 続きを読む

妻を捜す 東日本大震災②―個から見た死と葬送(22)

妻を捜す 3月11日以降、私の胸のなかを風が吹きすさび、ときおり内部に奥が見えない空洞が広がり、心を揺さぶり続けている。 捜す。 東日本大震災発生直後は、毎日遺体安置所に通って、新しい遺体を確認して回るのが日課だった。妻が見つかればと願い、でも妻ではなかったことにどこかで安堵していた。 4カ月経った今では、新しく収容される遺体は日に数体あるかないか。多少類似している遺体を見せてもらうのだが、近づくのを拒むような圧迫するような臭いのバリアが立ち込めている。鼻が殺がれ、目が窪み、遺体には生前の面影を偲べるもの... 続きを読む

東日本大震災①―個から見た死と葬送(21)

2011年の3月、東日本大震災について過去書いた原稿を少しずつ紹介する。 3.11 突然、激しく床が揺れた。 建物全体がゆっくり大きく横に揺れる。慌てて本棚を支える。本棚から本がドサドサと落ちる。でもそれにかまっている余裕はなかった。 経験したことのない揺れにどうすることもできず、ただ「凄い!」「危ない!」と言うだけ。 交通機関は全て停止した。 しかし、その東京での私の驚きは、後に次第に判明する事態に比べるとたわいもない出来事であった。 宮城県の北部、岩手県と接する栗原市が震度7であるとテレビは伝えていた... 続きを読む

葬祭仏教の誕生―葬祭仏教の史的展開(1)

戒名、布施の問題を取り上げてきたが、そもそも歴史的に「葬祭仏教」とはどう展開されたかについて数回に分けて書く。 葬祭仏教の誕生 ■「葬式仏教」の誕生 すぐれて「日本教」とでもいうべき「生活仏教」の形成に大きく影響を与えたのが「葬式仏教」であった。 寺は室町時代後期の「近世」の誕生と共に民衆、地域社会に入り込む。仏教は6世紀に日本に紹介されたとはいえ、近世以前は、基本は貴族、そして武家のための宗教であり、民衆の宗教ではなかった。葬祭仏教化することによって仏教は民衆社会に土着し、外来仏教であることをやめたの... 続きを読む