葬列―個から見た葬送(12)

基本としてここに描いたものはフィクションである。私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。 葬列 山道は昨夜の雨で少しぬかるんでいた。 近所の年寄りは「滑るから危ない」と言われ、無念そうに家の前で葬列を見送った。 ここの山間はもともと土葬の習慣の残る地区であった。だが合併し「市」となった今、市の病院で亡くなり、その市の斎場で通夜、葬儀が行われ、市の火葬場で荼毘に付されるケースが増えてきた。 この日の死者は、最近では珍しく自宅で亡くなった。 85になる母親は「がんの末期で... 続きを読む

「閉眼」って、何?―「改葬」問題のコンテキスト④

「閉眼」って、何? 「改葬」問題から言えば、少し寄り道に近い話だ。 「改葬」に際して、元の墓を原状復帰するか、その費用相当分を墓地管理者に支払う。墓石を撤去するだけではなく、使用していた墓域である墓所全体を原状=つまり使用以前の状態に復する必要がある。 また、管理料に不払いがあった場合にはそれを支払う。 以上は常識に属する。 しかし、「閉眼供養」って、何だ? 墓石業の方、寺院の方は(もっとも仏教者に限ることだが)「墓を建てた時は開眼供養をし、墓を閉じる時は閉眼供養をするのは常識」とおっしゃるだろう。※真宗... 続きを読む

弔われなかった死者たちの「葬」―個のレベルから見た死と葬送(9)

個のレベルから見た死と葬送(9) 基本としてここに描いたものはフィクションである。私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。 弔われなかった死者たちの「葬」 「葬」とは、歴史的に見れば多様である。 大昔であれば、死ねば山や野に、いや川原や路端に捨てられたこともある。聖たちがその死体を集めて火をつけ燃やし、その跡地である塚に名をつけて歩いたとされる記録もある。中世から近世にかけ、戦場や災害で死んだ者の死体は、集められ、大きな穴が掘られ、そこに投じられ埋められ、その跡は「塚」... 続きを読む

「改葬」に関する法令と若干の注釈―「改葬」問題のコンテキスト③

未だに改葬許可申請に、改葬先から受け入れ証明が必要と記載されていたり、改葬元墓地等管理者の埋蔵等証明が改葬承諾書みたいに誤解されている、と誤解されていたり、誤った記載をする説明が見られる。そこで「改葬」に関する法令について詳しく書く。 「改葬」に関する法令 墓地埋葬法(墓地、埋葬等に関する法律)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO048.html 第1条第3項「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移... 続きを読む