「葬式」はまだまだ変化している途中なのかもしれない。
95年頃、斎場(葬儀会館)が建設ラッシュとなり、「家族葬」という名の葬儀の「個人化」が進んだ。
00年頃には、いわゆる葬式をしない「直葬」が現れ、追って通夜と葬儀を一緒にした「一日葬」が出てくる。病院等で死亡した人をいったんは自宅に安置する「宅送(自宅送り)」が減少し、斎場(会館)へ遺体を送り、安置する傾向が出てくる。霊柩車の宮型車の利用が著しく低下する。
05年頃になると葬式の小型化とともに葬式への多様な意識が出てくる。メモリアルコーナーも一般化し、会葬礼状も定式からそれぞれに変化してくる。斎場(会館)も小型化し、あちこちにできることになる。都会では僧侶派遣プロダクションが暗躍する。関西では「香典辞退」の風潮が広まる。
95年頃からの変化をざっと書き出すと右のようになる。
この社会的背景としては、日本の高齢化率が上昇し「超高齢社会」へ突入したことが第一にある。平均寿命は、高度経済成長期の60年と11年を比較すると、男性65・32歳が79・44歳に、女性70・19歳が85・90歳になった。これに伴い年間死亡者が百万人を突破(11年は125万3463人)、年間死亡者では80歳以上が全体の死亡者数の半数を超えている。昭和前期には80歳以上が5%前後だったので大きな変化である。
家庭の流動化もある。かつて家族は動かないものととらえられていた。高度経済成長期に激しい人口移動が行われ、かつて郡部8割、都市部2割という人口構成が現在では郡部2割、都市部8割となり、核家族化した。その家族も分解を始めた。11年の世帯構成割合は、単独世帯が25・2%、夫婦のみ世帯が22・7%、夫婦と未婚の子のみの世帯が30・9%、離婚の増加もあってか一人親と未婚の子のみの世帯が7%、86年には15%あった三世代世帯が7・4%までに急低下した。平均世帯人員は2・58人まで低下した。
91年のバブル景気の崩壊の後の続く不況も大きく影響している。
こうした社会変化を受けて、人々の意識も変化し、葬送の変化を招いている。
看取りも老老、「嫁」ではなく娘が介護する事例が増加しているが、その娘も高齢化している。自宅死亡は12~13%を推移し、家族全体での看取りも少なくなっている。昔は家族が介護していたのに、というが、介護の長期化、担い手の少数化という現実を見ない空論。離婚率が3割にもなろうかという家庭の不安定化。かつては血縁、地縁、社縁があったがみな弱くなった。葬式の個人化はそれぞれの選択以上に社会変化によってもたらされたものである。
葬式の小型化が言われ、最も多いのが会葬者60名規模のもの。でも高度経済成長期以前に戻ったともいえる。本人を中心とした集団はこのくらいが現実的でもある。死者に対する疎遠、冷淡化もいわれるが、少数化したことで親密化を深める家族も増えた。個々の家族にあった葬送が求められる時代に入った、と言えよう。