葬儀挨拶文の作り方

●──追想の詩(わかれのうた)   藤田 宏
 愛した人、長くお世話になった方、親しくおつきあいを重ねた人が亡くなるということは、とても悲しいものです。おそらく「言葉はなんて無力なんだろう」と思うほど、その想いを適切に表現することはむずかしいものです。感情の高まりが言葉に優先してしまうのです。 でも、葬儀の場面では、悲しみにうちひしがれてばかりはいられません。亡くなった方が親しい人であれば、その交流の深さゆえに弔辞を依頼されることがあります。 また、葬儀委員長を依頼されることもあるかもしれません。すると式辞を読むことになります。
 愛する家族の一人が亡くなったときには、つらい心境の中でも喪主としての務めを果たし、喪主としての挨拶をしなければなりません。  限られた時間内に、多くの人の前で話すのですから、しかも、心が動揺している中でのことですからたいへんです。
 言葉を選び、想いを確かに伝えるにはどうしたらよいでしょうか。本書は、そういうときのお手伝いに少しでもなればと思って書きあげたものです。 私どもの胸にある想いを亡き人に伝えたい。感謝の気持ちを参列者に確かに伝えたい。その想いを表現するために、いささかなりともお役に立てたら幸いです。
 
 葬儀の挨拶にはどんなものがあるか  
 
 葬儀式では、開式の辞、葬儀委員長挨拶である式辞、弔辞、喪主挨拶、閉式の辞─などがあります。 このうち、弔辞と喪主挨拶以外は行われないことも多いです。尚、これらの挨拶が葬儀式の途中では行われずに、その後の告別式で行われることがあります。 まず、一般的な仏式(日本の9割の葬儀は仏式で行われます)の式次第を見てみましょう。
【葬儀式】
1 開式の辞
2 僧侶入堂
3 読経・引導
4 (葬儀委員長挨拶)
5 弔辞
6 弔電紹介
7 遺族の焼香
 
【告別式】
8 一般会葬者の焼香
9 僧侶退堂
10 喪主挨拶
11 閉式の辞
      
■1開式の辞
葬儀式の開式を宣言します。一般には司会者が行いますが、社葬などの大型葬では、葬儀副委員長の一人が担当することがあります。
この要点は次のとおりです。
 ・短く、簡潔であること。
 ・だれの葬儀であるかを明確にすること。
 ・どんな形式で行うか(例・「友人葬にて」)を必要に応じて明らかにすにこと。
 
■2葬儀委員長挨拶
個人葬の場合には、あえて葬儀委員長を立てないこともあります。大型葬の場合には、葬儀の主催者を代表しての挨拶が行われます。したがって、これを「式辞」とよぶことがあります。
この要点は次のとおりです。
 ・故人の生涯を簡潔にふりかえる。
 ・故人の人柄、業績の紹介。
 ・参列者への感謝の言葉。
 
■3弔辞
故人と関係の深かった、親しかった方数名によって行われます。よく長い弔辞に接することがありますが、最も伝えたいことにしぼって、3分以内で終わるように心がけたいものです。形式は特にありません。思い思いのスタイルで心の中にある想いを伝えればいいのです。
この要点は次のとおりです。
 ・故人と自分(または自分の所属する団体)との関わりを明らかにする。
 ・心に残るエピソードを紹介する。
 ・故人の冥福と遺族への慰めの想いを伝える。
 
■4喪主挨拶
喪主または親族を代表する方が参列者へのお礼の挨拶を述べます。短くてかまいませんが、家族にとって故人がどういう人であったかを紹介するのもよいでしょう。また故人の最後はどうだったか、ということは、関係者にとっては気がかりなことです。
この要点は次のとおりです。
 ・参列者へのお礼
 ・故人は家族にとってどういう人であったか。
 ・最後の様子はどうであったか。
 ・これからの生き方の決意。
 
■5閉式の辞
一般的には司会者が行います。大型葬では、葬儀副委員長の一人が主催者側を代表して行うことがあります。
この要点は次のとおりです。
 ・短く、簡潔であること。
 ・だれの葬儀であったかを明らかにすること。
 ・必要あれば、葬儀の形式(例・「○○会社の社葬とし」)を明らかにすること。
 ・参列者へのお礼の言葉。
 
 
 
 
以上が葬儀式(告別式)での挨拶の種類と要点です。形式によって、また、どの位置で挨拶するかによっても変わってきますので、式次第を確認しておくことが大切です。挨拶には、本来決まった形式は存在しません。いろいろな本が出されており、その本の中には、いかにも定められているかのような記述が目立ちますが、それは著者が慣習などを考慮して「こうしたほうがいいのではないか」と考えているものです。この本でも同じことです。大事なことは、挨拶される方が自らの場を適切に認識して、自分の心の中にある想いをよりよく伝えるか、にあります。そのためのアドバイスとしてお読みください。 
  *文中の人名、地名、社名その他は仮名にしてあります。
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