遠くなる母とその死―個から見た死と葬送(25)

携帯電話が鳴った。22時15分。 「高倉和夫さんですね。林病院の看護師の及川と申します。お母様の芳子さんが危篤になられましたのでご連絡します」 すぐに病院に車を走らせた。 ひどく落ち着いている自分がいた。 母は4人部屋から個室に動かされていた。 「高倉さんですね。こちらへどうぞ」 病室では若い医師がモニターを見ていた。というより私が来るのを待っていたかのようだ。モニターの線はもうなだらかであった。 「22時55分、ご臨終です」 と医師は言い、立って私に頭を下げた。 母の手を握ってみたが、ダラーンとしてい... 続きを読む

「葬式をするって!」―個から見た死と葬送(24)

「葬式をするって!」 兄が怒鳴った。 「どれだけ苦労したって言うんだ。これでやっとせいせいしたっていうのに」 兄が疲れた顔で言った。 兄の言うこともわからないではない。この10年、母は昔の穏やかな母ではなかった。 「お前たちは私を殺そうとしている」と被害妄想にかかり、近づくだけで「怖いよ」と喚き、退く。 また、よく怒鳴った。 私たち兄妹はすっかり消耗してしまった。 「でも、この10年の母さんは病気だったのよ、ほんとうの母さんではなかったのよ。せめてお葬式くらいやってやろうよ」 と私は必死に兄に頼んだ。 渋... 続きを読む

「家族」…この不思議なもの

「家族」というのは不思議なものだ。 多くの人にとっては、疑いようのない濃い人間関係なのだろう。 しかし、それ故、強い反発と憎悪の対象にもなり得る。 また、家族を私物化してしまうこともある。ほとんどが無意識のうちにだ。それがいつのまにか、相手への肉体的、精神的暴力となったりする。だが、それを意識化することは極めて困難である。 あるいは「関係を断つ」ことには相当の覚悟が強いられたり、いったん離れると、再度の関係づけは難しい。 「犯罪」というのは、「外から来る」と漠然と思っていることが多いが、実はかなりの確率で... 続きを読む

死亡数 人口動態統計と人口推計2006年版、2012年版、2017年版の比較

国立社会保障・人口問題研究所は、平成27年国勢調査の確定数が公表されたことを受けて、これを出発点とする新たな全国人口推計(日本の将来推計人口)を行い、 平成29(2017)年4月10日にその結果を公表。http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp 『四訂葬儀概論』(4月1日発行)にはギリギリ間に合わなかったのは残念。そこで死亡数についてのみ出生中位・死亡中位の推計を2006年版推計、2012年版推計と合わせて対照比較でき... 続きを読む

辻早紀「サヨナラの記念日」(葬送三部作)を聴く

CITY-WAVEの相徳さんという方からメールをいただいた。 突然のご連絡で申し訳ありません。  弊社は20年近くに渡り音楽レーベル「G-WAVE Factory」を運営しており、 CDのリリースやアーティストのプロモーション等を行っております。 今年の6月7日(水)にG-WAVE Factoryより「辻早紀(つじ はやき)」というソロアーティストが 『サヨナラの記念日』というCDで全国デビューするのですが、この作品のテーマが「死別」で、大切な人との死別はとても悲しいことだけれど、その人の記憶がこれか... 続きを読む