「遺体論」は今回をもって最終回とする。 民俗、習俗において「遺体」とはどういう存在だったのか?―遺体論④ はじめに 古来、日本人は遺体をどうとらえていたのであろうか? ここで葬儀習俗に残るものを手掛かりに述べるが、そういう形に定着するまで時代変遷があったはずである。 たとえば民衆が地域共同体を確立する以前はどうであったか? 都市での民衆の死体が路傍や川のほとりに棄てられていたという光景が伝えられるが、そこで民衆は人の死、そして遺体をどういう目で見ていたのだろうか? 単純に... 続きを読む
月: 2017年10月
弔われない遺体、近親者にとっての遺体―遺体論③
弔われない遺体 ①行旅死亡人(身元不明の死者) 1899(明治32)年にできて1986(昭和61)年に改正された法律に「行旅病人及行旅死亡人取扱法」がある。 この法律の第1条に「行旅死亡人と称するは行旅中死亡し引取者なき者をいう」とあり、具体的には「住所、居所もしくは氏名知れずかつ引取者なき死亡人は行旅死亡人とみなす」と定められている。 第7条には「行旅死亡人あるときはその所在地市町村はその状況相貌遺留物件その他本人の認識に必要なる事項を記録したる後その死体の埋葬または火葬をな... 続きを読む
葬制と遺体処理―遺体論②
葬制と遺体処理―遺体論② ①葬制 人が亡くなると葬儀が行われる。 ここで言う「葬儀」とは狭義のものではなく、人の死亡以降のプロセス全体を言う。 この葬儀の執り行い方を「葬制」(あるいは喪制)と言う。 この葬制は民族により地域により宗教によりさまざまではある。 さまざまではあるし、時代により変化もしてきている。 「葬制」とはそれぞれの民族、さらにいうならば地域社会(これも現在は解体の危機にあり、それゆえコンセンサスが急激に失われているのだが)における文化と言える。 ... 続きを読む