近親者の悲嘆への配慮―死者を弔うこと

■近親者の悲嘆への配慮 ・死別と悲嘆 葬式の機能を絞れば、一つは「死者(遺体)の尊厳を守る」ことで、もう一つが「近親者の死別の悲嘆への配慮」である。 「死別bereavement」とは近しい、大切な人が死亡することによって別れをよぎなくされることをいう。 死別によってもたされる深い悲嘆を「グリーフgrief」と言う。 悲嘆(グリーフ)には、悲しみだけではなく、不安に陥る、ショックで心が麻痺する、無気力になる、抑うつ状態になる、焦燥感を抱く、孤独感を深める、怒りを覚える、落ち着きがなくなる…等のさまざまな感... 続きを読む

弔いの問い直し―「死者(遺体)の尊厳」とは?

■葬式の原点は何か ・「葬式」の再定義 1995年以降、葬式は確かに表面的には非常に変化している。 現在進行形で変化しており、そのキーワードは「個人化」である。 1920年以降のコロナ禍においては、好む場合ばかりか好まざる場合においても葬式は個人化を余儀なくされている。 しかし、いくら変化しようと、変わっていないものもある。 葬祭仏教の成立期である戦国時代の葬式、昼間に行われるようになった明治時代の葬式、祭壇が照明で煌めいたバブル景気時の葬式、それぞれ様相には変化があるが、原点、基本には変化がない... 続きを読む

「0葬」とその批判 復刻版「0(ゼロ)葬から葬送の変化を検証」(2014年)―その3

前回まで 0葬登場の背景 復刻版「0(ゼロ)葬から葬送の変化を検証」(2014年)―その1 https://hajime-himonya.com/?p=5103 葬送の変化をどう読むかー 復刻版「0(ゼロ)葬から葬送の変化を検証」(2014年)―その2 https://hajime-himonya.com/?p=5106 【お断り】データ、肩書等は2014年の執筆当時のまま。 「0葬」とその批判 ①島田裕巳が提案する「0葬」 島田裕巳は、2014年1月に著した『0葬―あっさり死ぬ』(集英社)で次のように提... 続きを読む

葬送の変化をどう読むか 復刻版「0(ゼロ)葬から葬送の変化を検証」(2014年)―その2

前回 0葬登場の背景 復刻版「0(ゼロ)葬から葬送の変化を検証」(2014年) ―その1 https://hajime-himonya.com/?p=5103 データ等は2014年執筆当時のまま。 葬送の変化をどう読むか ①墓の変化 この間の葬送の変化は著しい。 墓は、江戸時代は集合墓も見られるものの個人墓が主体。 明治末期以降、「家墓」形態が主流となった。 1970(昭和45)年頃以降、都市化の進展による都市移住者の墓需要が拡大、大都市周辺で墓ブームが生じる。 民営霊園の多くがこの時期以降にできたもので... 続きを読む

0葬登場の背景 復刻版「0(ゼロ)葬から葬送の変化を検証」(2014年)―その1

【本稿についての注】 実は今回の原稿は7年前の2014年に書いたものである。 その頃、単行本の企画があり、その一部として書いたが、出版社が脱稿寸前に出版中止としたため、世に出なかった原稿である。 中小出版社の厳しい環境については熟知していたから、このことについて恨むことはなかった。 当時に比べて葬送の個人化はいっそう進行している。 2020年3月からのコロナ禍は2021年8月第5波を迎え依然として進行中である。 これが葬送にどういう影響を与えるかは不明である。 このところ「散骨に関するガイドライン(散骨事... 続きを読む