現代葬儀考

2035年問題―「団塊世代」の昼と夜

 

「団塊世代」というのは、戦後まだ荒廃していた社会に誕生し、そして皆高齢者の仲間入りした現在まで、何かと話題になってきた世代である。
「団塊世代」という言葉は70年代に堺屋太一が命名。第二次世界大戦後の1947~49年の3年間に生まれた世代を指す言葉である。

2013年現在、出生数は102万9816人である(人口動態総覧)。もうすぐ百万人を割ると推定される。国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成24年1月推計)』(出生中位死亡中位)によれば、6年後の2020年には出生数が83万6千人と推計されている。

団塊世代の出生数は、1947年が約268万人、48年が約268万人、49年が約270万人であるから、いかに大きな塊であるかがわかる。米国でも「ベビーブーマー」と呼ばれる。なぜ起こったのかは1941~45年という長期で世界規模で展開された第二次世界大戦が終結し、戦争に動員された大量の兵士が復員し、家族をもったことによる。

団塊世代までは、戦争が終わったとはいえ、まだ戦後荒廃が続くなかで育った。この世代の親世代は少年期、青年期を兵士としてあるいは後方支援部隊として戦争に動員され、復員後は日本株式会社の社員として戦後高度経済成長を担った。

敗戦とその混乱の後に、急速度で築かれた先進国日本は、地方から都市へ、という大量の人口移動、共同体の変移を招いた。この軋轢のなか、一つの「文化衝突」として起こったのが60年代後半の反ベトナム戦争、学生闘争であった。これを担った中心が団塊世代であった。
その敗北と挫折のなか(あるいは「ノンポリ」という傍観者であった大多数)、団塊世代は企業に就職し、その後の経済大国日本を領導した。

しかし、そればかりではない。今日に続く「消費文化」、ファッション、音楽、その他で、個を基本とする多様な文化をつくり出した。ビートルズに象徴される音楽文化を日本に根づかせた中心には団塊世代があった。
それが91年のバブル景気崩壊を機に「お荷物世代」となり、合理化の対象となり、今65歳となり高齢者の仲間入りすることで、社会保障の危機が囁かれるようになっている。

実は「終活ブーム」も団塊世代と大きく関係している。
団塊世代は今なお男性週刊誌や総合月刊誌の主要な読者層である。週刊誌が「高齢者のセックス」を頻繁に取り上げるのも主たる読者層が高齢者あるいはその予備軍になったからだ。

1995年以降の葬儀の変化は、超高齢社会化、核家族とその解体を背景としたものだが、同時に団塊世代を中心とした戦後派が喪主となることで引き起こされたものでもある。
世に言う「2035年問題」とは団塊世代が死亡平均年齢に達し、最多死となり、世帯主が75歳以上世帯で単独世帯が約4割と推計されている年である。
団塊世代の終末期は危機が想定され、その不安に乗じて煽るのも「終活ブーム」である。その底にあるものを注視したい。

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