Q.友人の葬儀の案内がきて、そこに「香典は辞退させていただきます」とありました。親友だったのでせめてお花くらいは贈りたいと思うのですがいいでしょうか?(65歳男性)
A 香典辞退が近畿地方を中心に流行の兆しがありますが、本来の意味の誤解から来ています。「香典をもらわなくても葬儀は出せる」という見栄のようなものを感じます。確かに社葬では香典辞退が一般的ですが、社葬は会社が経費を負担してする葬儀で、香典を得ると雑収入に計上しなければいけないという理由から来ています。社葬の場合でも香典は遺族が受け取ることにし、お返しも遺族が行えば、香典辞退とする必要はありません。供花においては収入が発生するわけではありませんので社葬だからと辞退する理由はそもそもありません。「社葬では香典・供花は辞退するもの」という意味を考えない誤った「常識」が半ば通用している事態は由々しきものだと私は考えます。
香典はかつて「香奠」と書いたように「香を供える、捧げる」という意味で、実際的には相互扶助の意味はあったにせよ、本来は弔意の表明です。お返しをどうするかはともかく、遺族は弔問者の気持ちを汲んで、まずはありがたくいただく、というのが本来的であると考えます。「うちは自分たちだけでやれるから」「香典返しが面倒だから」といった理由での香典辞退は、香典のもつ意味を誤解したものだと私は考えます。香典を辞退されると弔意を拒絶されたように思い、とまどう弔問者も少なくないのです。
葬儀には約束事があります。香典、供花は贈る側の意思、弔意の表明ですか、ら受け取る側の事情によるものではないのです。したがって受け取るのが原則となっています。
したがって「香典辞退」と案内文等に書かれていなければ「受け取る」ことを意味します。供花も同様で「供花辞退」と書かれていなければ供花は「受け取る」ことを意味しています。
ご質問では、香典辞退は記されているが、供花辞退は触れていないのでお花は贈ってもかまわないことになります。
質素に自宅で葬式するので、お花も辞退したいのであれば、案内文に「供花は辞退させていただきます」と書く必要があります。
近年、お葬式を質素に簡素にということが流行しています。それは本人や遺族の意思の問題です。しかし長くお付き合いした友人・知人の弔意も考えて、その気持ちを踏みにじることにならないよう配慮すべきではなかろうか、というのが私の考えです。