葬儀Q&A

Q40 お寺を替えたいが

 

Q.今のお寺の住職が気に入りません。何かというと寄付を求めてきます。このお寺にあるお墓を替えたいのですが、どうしたらいいでしょうか?(54歳男性)

A お寺の墓には両親や祖父母が埋蔵されている。自分もこの墓に死後は入るつもりだったが、住職が気に入らないので、いっそうのこと寺も墓も替えたい。こうした質問はしばしば寄せられます。

 檀家制度は今の憲法の「信教の自由」と矛盾するところがあります。檀家制度は個人の信条に無関係に家の宗教となっていますし、憲法は個人の信条の自由を謳っています。
 当然、個人の信条が優先されるので、檀家であることをやめる自由はあるわけです。しかし、そうして替えるとお墓が問題になります。お寺のお墓は檀家用に貸し出されているものですから、檀家であることをやめるとお墓を移さないといけないという事態が発生します。
 檀家をやめた場合に、お墓は必ず改葬しなければいけないか、というと異論もあります。死者の安寧や供養の権利があり、使用者の同意なしに、寺が強制的に改葬を行うことは難しいからです。
 檀家はやめるが墓はそのままにする場合、使用者は最低限守るべきことがあります。それは年間管理料に相当する金額を寺に納付し、寺が合同供養などをその宗派の方法で行うことを妨げないことです。

 檀家をやめるということは、2つ意味があります。一つは寺の宗旨から自分の宗旨を自由にすることであり、二つめは寺を支える義務から解放されることです。
 しかし、寺と檀家である関係は契約書のような形であるわけではないので、すっぱりといかないのが現状です。檀家をやめるが墓は引き続き使用したいというのは、法理論的には可能であっても、ギクシャクとしたものになりがちです。

 そこで檀家をやめると同時に墓も移してしまうという解決方法が浮かび上がります。
 法律的には「改葬」という手続きになります。
 まず改葬先を決める必要があります。これまでと同じ宗派のお寺にするか、あるいは別の宗派のお寺にするか、宗旨の自由な公営墓地や民営墓地にするか。これはあなたの信ずるところによる選択になります。
 改葬先がお寺の墓地である場合には、お寺を選び、その住職ともよく話し合って、ここであるならば託せると思われるところを選びましょう。
 また、家族ともよく話し合っておくことです。あなただけではなく、家族のお墓でもあるからです。
 また、お墓のありようも考えておきましょう。将来も家族が守っていく形態であるのか、あるいは永代供養墓、樹木葬のような跡継ぎを必要としない形態であるのか。
 改葬先は慎重に選びましょう。考えるべきことは、ほかにもあります。墓石はどうするのか。今まで使用していた墓石を移動するのか、新しい墓石を作るのか。新しく墓石を作るとすれば、和型なのか、最近人気の高い洋型なのか。墓石に彫る文字はどうするか。従来のように「○○家」と彫るのか、それとも家名の存続にこだわらずに「夢」「偲ぶ」などの好きな言葉を刻印するか、信条に従い「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」などと経文を彫るのか。

 改葬先が決まったら、改葬先の墓地の管理者から「受け入れ証明」をもらい、現在の墓地の管理者(お寺の住職)に「埋蔵証明」をしてもらいます。
「埋蔵証明」は一般に自治体に申請する「改葬許可申請書」と一体の用紙になっています。左が改葬許可申請書、右が埋蔵証明書という形です。基本的に遺骨単位でこれを作成する必要があります。  現在のお寺には埋蔵証明をしてもらうわけですから、できるだけ落ち着いた交渉を心がけたいものです。改葬は自由ですから、お寺が埋蔵証明を拒否することはできないのですが、人間対人間の関係なので穏便にこしたことはありません。
「改葬許可申請書」は現在の墓のある地の自治体に提出し、得た「改葬許可証」は改葬先の墓地管理者に提出します。
 書類だけでは済みません。現在のお寺の墓を原状復帰する必要があります。墓石を撤去し、更地に戻します。墓石業者に依頼しますが、一般に1平方メートルあたり10万円が目安です。

 費用も手続きも大変です。始める前に今のお寺の住職とよく話し合ってみて、替えたほうがいいか、よく考えてみることも大切です。

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