Q.今度、会社の会長の葬儀で社員代表として弔辞を述べることになりました。初めての経験でどう言ったらいいか悩んでいます。(54歳男性)
A 弔辞を述べる際に気をつけることは、次の点です。
(1) 長くなり過ぎない。
(2) 前置きは長くしない。
(3) 印象深いエピソードを入れる。
(4) ゆっくりはっきり話す。
まず(1)の長さですが、一般に弔辞の一人に与えられる時間は5分です。しかし5分全部使えるわけではありません。前に進んでいく時間、終わって弔辞をたたみ、自分の席に戻る時間があります。しかもゆっくりとした動作で行いますから、前後の動作に各1分、計2分必要です。
すると弔辞を述べる時間は正味3分ということになります。急いで話せば400字詰め原稿用紙1枚を1分で話すことができますが、ゆっくり話すとなると90秒で2枚、つまり3分間で話すのが適当な分量は、400字詰め原稿用紙で2枚程度となります。
これは文字の実数が800字ということではなく、改行などを入れてのうえです。
文章を改行するときは、話す場合にそこで一拍入れますので、改行することも計算に入れておきます。
400字詰め原稿用紙で2枚分というのは分量的に多い量ではありません。したがって(2)の前置きをあまり入れると内容が乏しいものになります。
前置きはこのようなものでいいでしょう。
「○○社に働く従業員を代表し、会長にお別れの言葉を述べさせていただきます」
友人代表であれば次のようになります。
「中学・高校と一緒に学んだ友人としてお別れの言葉を述べさせていただきます」
「会社で同僚として働いた仲間を代表して弔辞を述べさせていただきます」
会社の取引先であれば、
「仕事を通じて深くお世話になった者として、お別れの言葉を述べさせていただきます」
本文に入りますが、(3)にあるように印象深いエピソードを入れることが大切です。
社員代表であれば、
「会長は厳しい方でした。ミスに厳しく対処される方でした。
『ミスは隠してはならない。そのミスがどうして起こったのか、徹底的に原因究明しないと、また同じミスを犯してしまう。ミスを会社全体の共有財産にしなければならない』
と言うのが口癖でした。
最後に必ずおっしゃいました。『どうしたらそのミスはなくせるだろうか』
合理的な考え方の持ち主で、精神論やミスした本人の資質の問題としてではなく、常にシステムの改善の問題として考える方でした。
そしておっしゃいました。
『ミスというのはけっして個人の問題ではない。会社のミスなんだよ。ミスを隠蔽しない、透明性のある会社にしなければならない』
会長からいただいた薫陶はこれからも会社全体に徹底して、次の時代に引き継いでいきたいと思っております」(以上で350字程度)
エピソードは1つまたは2つ入れる程度と考えるといいでしょう。
弔辞とは、故人を「送る言葉」であると同時に故人の遺産を「いかに引き継ぐか」というためにあるのだと思います。いのちを引き継ぐわけです。引き継ぐ内容は、できるだけ故人の過去の言動を引用するといいでしょう。
また弔辞は、遺族や会葬者に「共感」を伝えるということが重要です。そのためにも「故人のイメージ」を鮮明に出す必要があります。中心はあくまで故人なのです。
そして最後は「共感」を伝えることで終わるといいでしょう。
たとえば、
「会長は5年前に社長の座を譲られたとはいえ、会社の精神的な支柱であられました。私たち社員はこの巨大な支柱を突然失い、途方に暮れています。
ご家族の皆様のお嘆きはさぞかしと思います。
会長、あちらに行かれた後も私たちを、ご家族を見守ってください。
以上をもって弔辞といたします」
難しい言葉遣いは不要です。皆に伝わるように話すことが大切です。