葬儀Q&A

Q47 本名で葬式できないの?

 

Q.私は戒名が嫌いです。一人の人間として生きてきたのですから、死後も本名でいたいのですが、無理ですか?(70歳男性)

A 誰にとっても本名というのは大切なものです。アイデンティティ(自分が自分であること)の象徴ですから、本名に対する愛着は捨てきれるものではありません。また、捨てる必要もありません。
 葬式で戒名(浄土真宗では法名)を授かるのは、仏教で葬式をあげるときですから、仏教で葬式をしない、キリスト教や神道、あるいは無宗教の場合には戒名(法名)はつきません。誰でもが死後に戒名(法名)を授かるわけではありません。

 本来「戒名(法名)」は仏弟子としての名前ですから、仏教に帰依したときに授かるものです。そういう意味では生前に仏教に帰依したときに授かるのが本来です。
 しかし、多くの人は生前に戒名(法名)を授かる習慣がありませんので、死後に授かることになります。
 仏教で葬式をあげるということは仏教徒であることを前提として葬式をするのですから、まだ戒名(法名)を授かっていない人の場合、葬式の前段階として戒名(法名)を授け、仏教徒として葬送の儀式を行うのです。
 仏教に帰依するわけではない。しかし、お経はあげてほしい。というケースでは、戒名(法名)をつけずに俗名のまま葬式をあげることができます。このようなときは前もって自分の意思を書き残しておくといいでしょう。

 しかし、菩提寺があり、そこの墓地に葬られるときには戒名(法名)が必要になるケースがほとんどです。
 なぜならば、菩提寺の墓地は檀信徒用に設けられている。つまりそのお寺の宗教宗派に帰依した人用の墓地であるからです。
 ですから公営墓地や民営墓地等の寺院境内墓地以外に葬られるケースでは、たとえ葬式で僧侶に読経をお願いしても、仏教徒として扱われたくないならば本名で葬式をする、つまり授戒などしないで葬式することもできます。

 注意しなくてはいけないケースは、故郷に菩提寺はあるが、東京なり大阪等で葬式をあげる場合です。ほんとうは菩提寺の住職に来てもらい葬式をしてもらえばいいのですが、そうできない場合です。
 一つの方法は菩提寺の住職に戒名(法名)をつけてもらい、それを送ってもらい葬式をすることです。もう一つの方法は、葬式は俗名でして、納骨するにあたって菩提寺の住職に戒名(法名)をつけてもらいます。
 菩提寺に葬られるのに菩提寺を無視して戒名(法名)をつけると、後からトラブルの要因になります。

 ご質問の主旨は本名へのこだわりにあると思います。死後に戒名(法名)がついても、本名がなくなるわけではありません。本名は本名としてあって、もう一つ仏教徒としての名前があるとお考えになるといいのではないでしょうか。
 例えば筆者は本名のほかに筆名(ペンネーム)をもっています。俳句をやられる方は号をもっています。
 それと同じだと思います。筆者は本名は大切にしていますが、文章を書くとき、仕事をするときは筆名です。本名で仕事をすることはありません。両方の名前に愛着とこだわりをもっています。

 戒名(法名)は、死後の名前ではなく、仏教徒となった証に授かった名前と解釈すれば、本名と戒名(法名)の両立は可能です。
 私の知っている真宗大谷派の僧侶は、名刺に、(  )内に法名を書いていました。私も本名を知らせる必要のある人に対しては筆名・事務所、本名・自宅を両方記した名刺を用意しています。
 本名と戒名(法名)は充分に両立が可能です。
 もう一つ戒名(法名)について関連したことを書いておきます。
 よく戒名(法名)を自分でつけることができないか、という質問があります。
 戒名(法名)は筆名と異なり、仏弟子にさせていただいた証として「授かる」ものなのです。授かるものである以上、檀那寺の住職に相談もせずに自分で勝手につけることはできません。
 しかし、希望があるならば、檀那寺と生前によく相談されたらいかがでしょうか。希望を入れてくれる僧侶もいることでしょう。
 死後につける場合でも、僧侶は遺族から話を聞いて、本人の好きだった文字、信条から字をとり戒名(法名)を授けることが多く見られます。

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