Q.お葬式を見ていると遺族席が前にあって参列者側を向いています。あれはどういう意味なのですか?(48歳女性)
Aお葬式で遺族席が前に設けられていて、参列者側を向いたり、横向きになっているのを見ます。ごく一般に見慣れた風景なので、それが正しいと思っている方が多数派です。葬儀社の人もそう思っていて、式場では遺族席が前方に特別に設定されていることが多いです。
しかし、私は2つの点から、これは誤りであると言いたいと思います。
第一の理由は、葬儀と告別式は違うということです。
告別式であれば、参列者の方の焼香に応えて挨拶するのに便利かもしれません。しかし、通夜や葬儀は違います。遺族も死者を弔うことに専心すべきです。とするならば参列者同様に前の本尊、柩を向いて座るべきです。
参列者の焼香の時間になって、遺族代表が答礼に立てばいいだけのことです。遺族全員ましてや親戚までも参列者に答礼する必要はありません。
実は、遺族席が参列者側を向く、横向きになるというのは歴史的経緯があります。葬儀と告別式が同時並行に行われるようになったとき、焼香の答礼に便利なように、と葬儀の本質をわきまえないで、社会儀礼優先にした結果です。
通夜の席でまで遺族席が参列者側を向く、横向きになる形になったのは、近年の通夜の告別式化の影響を受けたものです。
通夜、葬儀は何よりも死者を弔う遺族たちのためにあるべきです。こうした悪習は正されるべきでしょう。
遺族にはわかりませんから、葬儀社の人がこれを早急に正さなくてはなりません。
第二の理由は、遺族に不必要な緊張を与えてはいけないということです。前に座れば、遺族の所作は全て参列者から見られることになります。自ずと、泣きたいのに泣けない、呆然としていることが許されない、しっかりしていなくてはいけない、と強いられてしまいます。 遺族はそうでなくとも家族を送り出すことで緊張を強いられているのです。余計な緊張を与えることはマイナスでしかありません。
途中で耐えられなくなり席を外したいと思っても、皆が見ているところではできません。
以上、葬儀本来の意味と遺族のグリーフケアの観点で、遺族席が参列者側を向く、横向きになる形は即刻改められるべきだと思います。
なお、祭壇に向かって右側前列が遺族、親戚席、左側前列が来賓席になり、内側が上位になります。
但し、遺族席が横向きになるのが全て悪いわけではありません。それは家族葬など小規模葬儀の場合です。
しかし、こうしたケースでは遺族だけではなく、参列者も柩を囲むようにしたいものです。皆で死者を身近にして、温かくお別れして送るという形をつくるためです。