Q.葬式費用としてどのくらい準備しておいたらよいか、考えています。特に宗教者の方へのお礼の金額がわかりません。(75歳男性)
Aお葬式の費用といっても、どんなお葬式にするかで変わってきます。
お葬式の費用は大きくは次のように分けることができます。
①葬儀社の費用
②飲食接待の費用
③宗教者への謝礼
④その他の費用
お葬式の費用は全て葬儀社に支払われるものではありません。(葬儀社への支払は稿を改めて説明します)
②の飲食接待費用は、地域の人が食事を作ったり、直接料理店等に注文する場合がありますが、最近では葬儀社経由で注文し、代金を葬儀社に支払うケースが多いようです。しかし、これは葬儀社経由でないとできないものではありません。
③の宗教者への謝礼は、葬儀社に支払う筋のものではありません。僧侶、牧師、神職などの宗教者へのお礼ですから、遺族から直接お渡しすべきものです。(これについては後段で詳しく説明します)。
④その他の費用は、①~③以外にお葬式に伴って必要となるお金です。これは個々の遺族の事情によって異なるのですが、地方の親戚の宿泊費、遠方に住む家族の交通費、親族だけでとる食事の費用などです。どんな費用が必要になるか、事前には予測しがたいものですが、私はこれを予備費として10~20万円見ておくことを勧めています。
③の宗教者への謝礼ですが、これには基準になる数字がありません。つまり「料金表」は存在しないのです。仕事の対価ではなく、それぞれの遺族によって変わるもので、文字どおり「感謝の表現」です。
宗教者を依頼しなければ、この謝礼自体が発生しません。つまり0円ということです。
宗教者を依頼する場合謝礼の額は遺族あるいは故人と寺・教会・神社との関係によって変わります。
ある方は亡くなる前に「檀那寺に1千万円お礼するように」と言い残しました。これは高い、安いという問題ではなく、その人の信仰の問題、つまり心の問題なのです。
また、ある遺族は僧侶に相談したら「お気持ちで結構です」と言われたので、枕経、通夜、葬儀、火葬とお勤めいただいたのに5千円しかお礼しませんでした。この話を聞いたとき、私は感謝の気持ちがない遺族に呆れたものです。
「でも、相場というのがあるのでは?」と聞かれます。
キリスト教会や神社では規定を定めているところがありますが、概ね10~20万円程度が多いようです。もっとも、もっと多くお礼してもかまいません。キリスト教では牧師や神父へのお礼以外に、オルガニストや教会堂使用のお礼がありますし、神道では斎主の神職以外に音楽を奏でる方などへのお礼も発生します。
仏教では、宗派の違いよりも地方や寺格による違いが多いようです。
また、僧侶の人数で違ってきます。例えば導師以外に3人お願いする場合、導師以外にはお一人3~5万円お礼するケースが多いようで、計9~15万円となります。
では肝心の導師をお務めいただく僧侶への謝礼ですが、20~40万円くらいが多いようです。
さらに院号等の特別な戒名(法名)をいただいた場合には20~60万円くらい加算してお礼することが多いようです。ここで「多い」と言ったのは僧侶によっては院号を授与したからといって、その分のお礼の受け取りを断る方もいるからです。
仏教は一見高額に見えますが、本来、導師をお願いするのは檀那寺(お手次寺)の住職です。檀家であるとは、お寺をそれぞれの事情に合わせて護持する責任もあるのです。「葬式の日当としては高い!」と思われるかもしれませんが、葬儀や法事の際のお布施については、当日のお礼プラスお寺の護持費用と考えるとよいでしょう(キリスト教会員は年収の5~10%くらいの額を毎年、月分割で献金して負担しています)。
経済的に困っているならば率直に住職と相談すればいいでしょう。
よく「お経料」「お戒名(法名)料」という言い方がされますが、間違いです。僧侶へのお礼は「料金」ではありません。合わせて「お布施」です。
くれぐれも檀那寺以外の僧侶を紹介され「院号付きで40万円、安いでしょう」という商売にひっかからないように注意しましょう。
信頼できる宗教者選びは大切です。できれば事前に選んでおきましょう。