Q.母親が入院中で、お医者さんからは「覚悟しておいてほしい」と言われました。葬儀費用について心配です。どのくらい用意しておいたらいいでしょうか。(58歳女性)
A お葬式といっても20万円くらいで済ませる場合と1千万円以上かけるものまでさまざまです。
自動車の価格にたとえて考えてみることができます。軽自動車、小型自動車、高級車、バン、トラック、バスなど機能、用途、目的等によって60万円くらいから1千万円クラスまであります。また、本体価格とカーナビをどうするか等のオプションの選択によっても変わります。
250万円の車本体にカーナビ等のオプションを加えて、諸手数料を入れると330万円程度になることもあります。買う人の考え方によって大きく変わります。
葬儀の費用も、安ければいいのか、それなりのレベルのサービスを期待するのか、また、人数、場所によっても異なってきます。
お母さんをどういうふうに送ってあげたいかによって変わってきます。
そこで参考になるのは平均費用のデータです。
07年の日本消費者協会の調査によると、全国の平均費用は次のようになっています。
(1)葬儀一式費用
142・3万円
(2)通夜からの飲食接待費用
40・1万円
(3)寺院の費用
54・9万円
この(1)~(3)を合計すると237・3万円となります。
これで終わりかといえば違います。これには「香典返し」のお金が入っていません。仮に会葬者一人あたり3千円の品を132人(05年公正取引委員会調査)に贈るとすると39・6万円かかります。…(4)
これ以外に、その他の費用があります。親戚の宿泊費などその家によって変わります。これが大体10~30万円くらいかかりますので、とりあえず20万円としておきます。…(5)
以上、(1)~(5)を合計すると296・9万円になります。これが総支出になります。
しかし、お葬式には「香典」という収入もあります。
香典の平均額は約8千円ですから、132人が来たとして105・6万円の収入があります。…(6)
また、公的な葬祭費も5万円程度出ますので、収入の合計は110・6万円となりますから、自己負担額は186・3万円です。
でもあくまで平均の費用です。中身はいろいろと変更が可能です。
(1)の「葬儀一式費用」には葬儀社への支払い、火葬費用、骨壺代、霊柩車代、マイクロバス代、式場使用料などが入っています。
ここには基本葬儀料、オプション料金が入っています。基本葬儀料に含まれる範囲は葬儀社によって相違がありますので、注意が必要です。
葬儀一式費用が142・3万円であるとすると、基本葬儀料は80~100万円クラスでしょう。データは平均額ですからちょっと高めになっているようです。
一般的なケースでの基本葬儀料は40~60万円クラスです。そうであれば葬儀一式の費用は80~100万円程度になります。
(2)の「飲食費用」も考え方はいろいろです。通夜振る舞いをどうするかによっても変わります。仮に80人程度に1千円平均の飲食を振る舞えば8万円ですし、20人程度であれば2万円です。葬儀の後の会食費も20人程度が5千円の飲食をすれば10万円です。葬儀の後の会食10万円とすれば、合計で18万円です。
(3)の「寺院費用」はそれぞれの考え方で大きく変わります。無宗教葬を選び、宗教者を依頼しなければ0円です。神道やキリスト教の場合は決まっていませんが、10~20万円程度が多いようです。
仏教では故人の寺との関係によって変わりますし、料金ではありません。戒名が信士、信女等の普通のもので、僧侶が一人の場合には20~40万円程度で、院号付の戒名等を付けるお寺と深い関係の場合には70~90万円程度のお布施となります。
基本葬儀料ではどのランクを選ぶか、飲食、返礼品はどうするか、宗教者へのお礼は…と考えると選択肢がいろいろです。
葬儀費用というのは、遺族の考え方によっていろいろ変わるのです。多くの場合、自己負担額は100万円以内に留まることが多く、会葬者が多いほうが総支出は増えても自己負担額は低くなる傾向にあります。