葬儀Q&A

Q69 葬式での「義理」とは?

 

Q.私の嫁ぎ先では近所で葬儀があると手伝わなければなりません。「どうして?」と訊くと「義理だから」という答え。私は「義理なら行かなくてもいいじゃない」と考えるのですが。(48歳女性)

A ちなみに『広辞苑』で「義理」を調べると「(1)物事の正しい筋道。道理」「(2)わけ、意味」」「(3)(儒教で説く)人のふみ行うべき正しい道」「(4)特に江戸時代以後、人が他に対し、交際上のいろいろな関係から、いやでも務めなければならない行為やものごと。体面。面目、情誼」「(5)血族でないものが血族と同じ関係を結ぶこと」と5つの意味があり、ここでも時代による意味の変遷がうかがえます。
 問題は(4)の意味に関してで、「義理」を有意味なことととらえるか、またあまり意味がないことととらえるかの違いです。
 葬式では本来「義理」は次のような意味で使われていました。
 葬式は血縁共同体、地域共同体が主体となって行われており、江戸時代までは棺、桶の提供、あるいは火葬や土葬の人夫またはその手配等を行う業者は都市ではいましたが、地方ではほとんどいなかったと思われます。

 向こう3軒両隣といい、八人組、五人組等といい、地域の仲間はあらゆることで連携していました。
 特にその1軒で死者が出たとします。その家の家族はいまで言う「グリーフ」を体験します。特に生活維持をしている人の死は、精神的打撃のみならず生活的危機も同時に招きます。地域の仲間が自分の家族のように思い、大変な家族に代わって葬具作り、炊き出し、連絡等を進めます。家族は弔いに専心することができました。こういう援助を受けた家族は地域仲間に「義理」をもっていて、仲間の家で死者が出ると「義理を返す」とばかりに熱心にサポートを行います。それがかつての「義理」でした。
言葉を換えれば、地域仲間の結びつきは濃いものでした。それが変わってきたのには要因があります。
 
 サラリーマン化が進み、地域仲間が生活共同体ではなくなったこと、地域仲間の援助が煩わしくなり葬祭業者に依頼したほうが楽だと考える人が出てきたこと、若い人は仕事で日中はいないので高齢者だけになり、やれることも限られてきたこと等、いろいろと考えられます。
「義理なら行かなくてもいい」という場合の「義理」の意味は、「大して重要な関係ではないが社会的体裁上行かざるを得ない関係」のことを言います。

 いまの葬式の個人化の流れは、「本人とは大した深い関係ではなく、社会的立場上『義理』で会葬せざるを得ない」関係者を排する動きでもあるでしょう。しかし友人・知人の中には故人に個人的にも世話になり、恩を受け、感謝しており、どうしても会葬してお別れさせてほしい」という「義理」のもち主もいることでしょう。積極的な意味での「義理ある関係」ならば、せめて会葬くらいはして義理を果たしたいと思うのではないでしょうか。

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