Q.私は次男です。東京に来て長いのですが、葬式のとき、お坊さんはどこに頼めばいいのでしょうか。田舎のお寺とは付き合いがありませんので。(68歳男性)
Aいくつかの選択肢があります。
一つは田舎の菩提寺の住職に相談することです。
「次男」という言い方をするところをみると、長男か、その長男の子どもが田舎のお寺の檀家になっているように思います。長男にしてもその子の甥や姪にしても、お付き合いはあると思いますので、菩提寺の意向を訊いてもらう。あるいは、その方に断って菩提寺に電話をして相談してみてはいかがでしょうか。
あなたのご両親も田舎のお寺の檀家であったならば、その子であるあなたも檀家の家族の一員です。あなたがご自分の葬儀を菩提寺にお願いしたいと言うならば、菩提寺の住職はきっと来られると思います。その際に往復の交通費と宿泊費はお布施とは別に実費相当を包みます。
また、菩提寺の方が来られない場合には、東京で菩提寺の住職のお知り合いのお寺を紹介してもらうようにお願いしておきましょう。
よく「田舎の僧侶はわざわざ来てくれないだろう」と早合点して、葬儀社に東京のお寺を斡旋してもらいがちですが、まずは田舎の菩提寺にお願いするのが筋です。
田舎の菩提寺にあるお墓に入る予定であれば、なおのことです。
よく「次男だから田舎のお墓には入れない」と思っている方がいます。それは田舎のお墓を現に管理している方(長男またはその子ら)が拒否した場合で、認めてくれるならば入ることができます。
ただし、あなたの配偶者やお子さんたち家族が「近くがいい」と希望されるのであれば別です。
そのとき、考えることは2つあります。
「葬式や法事を頼むお寺はどうするか」ということと、「墓地はどうするか」です。
墓地もお葬式や法事も同じお寺で、とお考えでしたら、自分の脚を使って調べることです。お寺と墓地の2つの要素がありますが、第一にはいいお寺、つまり信頼できる住職のいるお寺です。
いい住職なのだが、墓地は不足している、というならば、住職が墓地探しに協力してくれるはずです。
葬式や法事は田舎の菩提寺の住職にお願いするが墓地は東京で、というならば墓地を探します。
檀家となるお寺は決まっているので、宗旨を問われることのない公営墓地か民営墓地になります。
墓地以外に納骨堂という選択肢もあります。また墓地にしても樹木葬墓地があり、こちらはお寺による経営が多いですが、檀家になることを条件としていないケースが多いです。また、話題の散骨(自然葬)を選ぶ方もあるかもしれません。
「お寺を選ぶ」というのは案外難しいところがあります。宗派も重要ですが、ちょっと置いて話を進めます。
第一に重要なのは、先述したように住職の人間性です。自分も家族も相談にのってくれそうか、という視点が重要です。お寺は葬式や法事だけのお付き合いにあるのではなく、いろいろな面で相談相手になってくれることが大切です。住職の人間性を確かめるには何回か通い、お寺の行事に参加してみればいいでしょう。
「お寺を選ぶ」ときの条件にならないのは大きい寺か小さいお寺か、ということです。お寺の世界、けっして大きいお寺に信頼できる僧侶がいるわけではなく、小さなお寺に優れた僧侶の方がけっこういるからです。
次に根本的な宗派の問題です。
一口に「仏教」といっても、さまざまです。
仏教では、一つは田舎の菩提寺と同じ宗派か、という問題です。同じということで選べば便利なことが多いです。
しかし、信仰の自由は個人にありますので、自分が最澄が開いた天台宗系がいいか、空海が開いた真言宗系がいいか、法然の浄土宗がいいか、親鸞の浄土真宗系がいいか、日蓮の日蓮宗(法華宗)系がいいか、禅宗(道元の曹洞宗、栄西の臨済宗)がいいか(他にもあります)、考えましょう。宗派はそれぞれ特色がありますから、この機会に勉強してみるのもいいでしょう。勉強すると結構楽しくなるものです。
勉強した結果、「この教えがいい」と選ぶ人もいれば、「根本はみな同じだ」と宗派に執着しない人もいます。お寺やお墓の選び方から深い世界に触れる機会も生まれます。