葬儀Q&A

Q81 旅支度の杖に死者の年齢は関係するか?

 

Q.納棺の際、ご遺族・ご親族さまに一つひとつ意味合いを説明し、「末期の水」「旅のお支度」をお願いしています。私の地区の葬儀の70%以上が高齢者ですが、まれに40~60歳の方の場合、「杖」は私の判断でお願いしません。「杖」は年齢に関係なくお願いしたほうがよろしいのでしょうか。
また、先日の納棺の際、「三途の川ってどのくらい大きいの???」と小学3年生のおじょうちゃんに質問され困ってしまいました…。(茨城県 45歳男性)

A 民俗はその地その地で解釈されてきたものですから、正解のない世界です。
●末期の水
 一般的には臨終の際に行う儀礼ですが、納棺のときにしてもかまわないでしょう。元来は「蘇生を願って」行ったものが儀礼化したものだと考えられています。でも死者に触れて別れるという意味にも考えられます。

●旅
 これは「あの世(彼岸)」への旅、善光寺参りに出かける旅、あの世では仏弟子としての修行する(四十九日)ための修行僧の姿、と大まかに3通りの解釈があり、「善光寺」も長野の善光寺ではなく、地域によって寺名が違ったりします。したがって「杖」は年齢に関係ないものだったでしょう。

 というのは、昔の旅は徒歩(草鞋)を前提としたもので、若くとも長時間になり、坂などでは杖がほしい、と思う人もいたでしょう。でも、これは想像力の問題ですから「若い人は不要」との考えもあり得るものです。

●三途の川
 この幅は「深くて広い」としか言いようがありません。でも向こう岸に見えたという逸話もあるくらいですから、見えないほど遠いとは限りませんね。渡し舟で渡ったと考えられ、その運賃が「六文」だったわけで。無論これは「六道」とかけた言葉でもあります。亡くなった直後は呼べば戻ることが可能とも思われていましたし。

 まぁ、向こう岸まで行って戻ってきた人はいないのでわかりません。あるおばあさんは「きっといい所なのでしょう。悪い所だったら戻ってきた人がいてもいいはずです」と言っていました。あっちの世界はいい所だ、と一般的に思われています。もっとも門番がいて地獄に落とされる人もいる、という話もあります。

 こういう民俗はその地で民話のように伝えられ、いく時代にもわたって人々の想像力でさまざまな脚色がされてきました。想像する楽しみがあります。
 三途の川を訊いた子に「どのくらいの広さかな、(死んだ)おばあちゃんからはこっちが見えているかな、どうかな」といった話が展開されるといいですね。
 決まった解答ではなく、その子らなりの死への考えが育つ機会になるといいと思います。
 民俗は、想像する対象としては興味深いものです。

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