Q.先日、ご近所の方がお葬式をされたのですが、何かとトラブルが多く大変だったようです。トラブルなくお葬式をするのにはどうしたらいいでしょうか。(62歳女性)
A お葬式の世界もいろいろな変化があります。そのためにお葬式に対して描く思いが違っていることがトラブルを招く原因の一つになっています。
トラブルには大きく分けて4つの種類があります。
①家族や親戚間のトラブル
②地域社会・企業等の社会的関係のトラブル
③葬祭業者とのトラブル
④宗教者とのトラブル
以上を一つひとつ考えていきましょう。
①家族や親戚間のトラブル
死者を中心に考えることが大事です。第1に考えるのは本人の意向、第2は配偶者の意向、第3は親や子どもの意向、第4はきょうだいの意向、第5はその他の親族の意向、と順序をつけて考えてみることです。
本人、配偶者、親の意思は容易に考えるのですが、「子ども」関係にある人たちと「きょうだい」関係にある人で意向の確認が抜けることがあります。
例えば90歳の母親が亡くなったとします。子どもが兄姉妹の3人だったとすると、姉と妹は結婚して姓が変わったから別と考えがちです。戦前の民法の世界では法律的には違うとされても戦後の民法では結婚しようが、姓が変わろうが子どもと親の関係は何一つ変わりません。いくつになっても親子です。お兄さんの意思だけで決めると、他の子どもとの間に感情的トラブルが生まれます。
「きょうだい」も同じです。とかく子の立場で見ると母親のきょうだいはおじさん・おばさんになりますが、死者である母親を中心に考えると、母親のきょうだいになります。同じ家族なのです。家族の意思を確認するときに抜けることがないよう配慮したいものです。
②地域社会・企業等の社会的関係のトラブル
上の①の家族の意思が固まっていれば②は容易です。密葬・家族葬にして地域の人や会社関係の人の会葬を断わる場合でも、町内会長とかキーになる人には死亡したことを伝え「本人の固い意思ですので、申し訳ございませんが」と伝えるといいでしょう。また、関係者にはお葬式が終わった後に、死亡の通知、生前お世話になったことへの感謝を心尽くして手紙にして出すことを勧めます。
ただ本人の無二の親友にはお知らせして出席いただくようにするほうがいいでしょう。親しい友人には、血縁関係とは別の深い感情の交換があります。
③葬祭業者とのトラブル
これを回避するためには、いちばんは生前に事前相談をして、行き違いのないようにしておくことが大切です。もし事前の打ち合わせがなかったときは、遺体を自宅に安置した後、家族で相談してから葬祭業者と打ち合わせするとよいでしょう。深夜に亡くなり、連日徹夜の看護をされていたとき、そのままの状態で打ち合わせをすると精神的にも身体的にもたいへんです。少し横になったりして休んでからの打ち合わせでかまいません。
また、直接の親子関係や配偶者はそうでなくとも精神的に混乱したり、呆然自失状態になりかねません。それは当然のことです。そのときは親しいがちょっと離れた人、母親が死亡した場合に実の子の配偶者、母親のきょうだいの子、親友などに介添えを頼むといいでしょう。
家族の意思を先に話し、わからないことは聞くとよいでしょう。もし葬祭業者が家族の意思に誠実に耳を傾けていると感じなかったり、説明がわかりにくいときには担当者を変わってもらうか、他の業者を呼んで相談したりするとよいでしょう。
大切なことはモノが立派なことではなく、死者の扱いが丁寧か、家族と同じ目線で誠実なサービスを提供してくれるかです。料金には礼品や料理等、親族や会葬者により数により変動するものがあることに注意しましょう。
④宗教者とのトラブル
できれば本人が生前に決めておくといいことです。「家の宗教」という考えがまだ強いですが、第1に尊重すべきは本人の信教・信条です。
第2は、檀那寺があれば尊重したいです。仮に遠方に檀那寺があっても連絡すれば多くの場合には来てくれます。
謝礼やお布施は個々の事情に応じ誠実にすれば案外問題はありません。「適当」という態度は問題を招きます。宗教者の依頼は家族の仕事です。葬祭業者の仕事ではありません。