葬儀Q&A

Q86 「永代供養」はどういうこと?

 

Q.実家の墓は兄が独身のため跡を継ぐ人がいません。兄は「永代供養を頼んだから心配ない」と言うのですが。(59歳女性)

A 言葉というのは難しいですね。よく、「お墓を買う」という言い方をしますが、厳密には「お墓を、期限を定めないで使い続ける権利」の入手を言います。これが「永代使用」ということです。
 期限を定めないといっても、肝心の「借り手」がいなくなれば使用権はなくなります。
 お墓の場合に「借りている」のは死んでお墓に埋蔵されている人ではなく、今生きて祀る人のことです。祀る人がいなくなると、いやな言葉ですが「無縁墳墓」とされ、官報に載せ、1年間墓所のところに縁者がいたら申し出てくれるよう書いた札を立てておき、1年間経っても申し出る人がいなかったならば、墓地の管理者がその墳墓を改葬、撤去することができる、と定められています。

 一般に墓所(墳墓として借りている地面)は借りていますが、墓石は建てた人の所有物です。使用しない からと1年で撤去するのではなく、一般に使用しなくなってから、お墓の管理料を支払わなくなってから、5年以上経過後に改葬手続きが行われます。契約(墓地の場合、「使用規則」という形が多い)によって定められています。

 最近出てきている有期限墓(10年とか30年の期限がついている墓)は「30年経ったら使えなくなる」というよりも「30年間の使用は保障されている」と考えると、「永代使用」よりも安定していると考えることができます。自分が死亡しても友人や知人がお墓参りができる期間は大丈夫、となります。「永代使用」は、お墓の跡継ぎがいなくなってから最短5年の使用しか認められないというケースがありうるからです。

 一般に寺院が「永代供養」と言っているのは、お墓それ自体のことではありません。たとえば位牌を作り、お寺の位牌堂等に安置し、「お寺が続くかぎり供養をします」という意味です。宗教的な供養はモノとしての墓石、遺骨を意味しないのだ、と考えれば、それで「期限なく供養される」権利を取得することになります。

 寺での「永代供養」は、現代の「権利」と同じように考えると、無理が出てくるところがあります。
 昔は供養を約束した住職が存命するかぎりで、その住職の死後のことまでは言及していない、とあいまいに理解されていたようです。住職が代わり、寺に縁者がいなくなったと判明したとき、新しい住職はその墓の処遇を考えたと言われます。

 寺院境内墓地は檀信徒が支える宗教共同体の施設という性格をもつので、寺は檀信徒の益になるよう考えるという信頼が根拠になります。
 反対に「事業型墓地」と分類される公営墓地や民間墓地(一般に「霊園」と名づけられることが多い)は契約に基づいてなされます。事業型墓地は「永代使用」という言葉を用いないで「使用権」として契約(使用規則)で使用条件を記載する例が増える傾向にあります。

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