Q.私どもの会社は従業員数約2百人ほどの中小企業です。会長が危篤で社葬の準備をしていますが、個人葬と社葬の合同葬を企画しています。香典の扱いですが、社葬では香典を受け取らないものでしょうか。(50歳男性)
A「社葬で香典を受け取らない」と言われているのは、初期に社葬を企画した人が面倒を避けようとして行ったもので、そうしなければならない、というものではありません。
「社葬」は会社が運営と費用負担を行う葬儀ですが、葬儀である以上、同時に参列・会葬する人は故人を弔い、故人の遺族へ弔意を表明する意味があります。
そもそも「香典(香奠)」とは「香を供える」という原義からわかるように、「故人を弔い、故人の遺族へ弔意を表明する」手段の一つです。「社葬」はその運営方式や費用においての意味で、葬儀の内実を変えるものではありません。
したがって香典は会社が受け取るものではなく、故人の遺族が受け取るべきです。受付では会社の人間は会社としてではなく、故人の遺族の代行をしているものであって、そこで受け取った香典の全額を後で遺族に渡せばよいのです。香典返しをする場合には会社の名と費用負担で行うのではなく、遺族の名と費用負担で行います。その作業の企画・手配等を遺族の同意を受けて会社が無償支援するのは何ら問題ではありません。
問題は、香典を会社が受け取り、会社の名で香典返しをする場合です。この場合、会社はその費用を経費としては認められず、香典収入は雑収入に計上する必要があります。
これを、「社葬」は会社の全責任で行うものだからと、面倒を回避して「香典辞退」とした例が多かったために、「社葬での香典辞退」が一般化したのです。
葬儀の本来の意味を考えれば、葬儀形態のいかんにかかわらず、香典は故人および遺族に渡されるものだということがわかります。
香典については、参列・会葬いただいた方に故人がお世話になったことへの感謝として行うもので、香典に対して気持ちだけはいただき、現金は辞退させていただく、ということはあり得るでしょう。しかし、香典は任意の気持ちの表明としてあるのですから、面倒とかの理由で香典辞退に走るのは主旨が違うもののように思います。
香典を受け取る、受け取らないは、葬儀をどのように行うか、という主催者側の考えに基づくものです。しかし、辞退の理由が「面倒」というのでは、その葬儀の主旨に疑問がつくように思います。