Q.兄が95歳の長命で死亡しました。甥から知らせがあったのですぐ行こうとしたら「葬式は2週間後で、それまでは斎場の保冷庫に預けたから、今は会えない」というのです。そんなに長く預けて大丈夫なのでしょうか。(82歳女性)
A遺体に対する感覚の差が遺族でも見られるようになっています。かつては病院で死亡した場合はまず自宅に送り、自宅の布団に寝かせて一晩を過ごし、翌日に納棺、その夜または翌々日に通夜、その翌日に葬儀、火葬…というのが一般的でした。東北等の火葬を葬儀に先だって行う「骨葬」地域では、通夜の翌朝に自宅から火葬をし、その足で寺へ行って葬儀を行い、その後で納骨する、というのが基本形でした。
死亡してから葬式が終わるまでの日程が早くて3日程度、遅くとも5日程度が一般的でした。遺体はいつまでも保全できない、腐敗するからです。かつては自宅に遺体を安置しますから、安置が長期になると、遺体は異臭を放ち始めます。また顔も変化を始めます。遺族は遺体の尊厳が失われるという恐慌状態に陥ります。ですから遺体があまり変容しないうちに葬式をしてしまおうと考えました。
現在は早めに納棺してドライアイス処置をすれば腐敗の進行を多少遅らせることは可能になりましたし、エンバーミング処置を行えば1カ月程度の保全は可能となりました。遺体の状態によっても大きく変わります。
しかしエンバーミングするのでなければ2週間以上の引き延ばしは、遺体を公衆衛生上安全に保全するのは無謀です。
死亡したと判定された時点で遺体への関心をなくす遺族が出てきました。これは葬式をするかどうか、というよりも重要な問題ではないでしょうか。
冷蔵庫に入れれば安全なわけではないのです。
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