葬儀Q&A

Q98 災害時の葬儀費用は?

 

Q.災害時の葬儀費用は?(48歳女性)

A2011年の東日本大震災のような大災害では、被災して亡くなった方の家族も着の身着のままだったのでお金を所持していなかった方も少なくありません。
 お金がないと亡くなった方の火葬もできないのでは困ります。そのため災害救助法を定め、実質的に住民が困らないよう救助する仕組みができています。

 「災害救助法」の目的は「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかった者の保護と社会の秩序の保全を図ること」(第1条)と定められています。

「応急的に、必要な救助」とありますので、あくまで緊急時に行われるものです。支援の対象者は「当該災害にかかり、現に救助を必要とする者に対して、これを行なう」(第2条)とあるように被災者に直接行われます。

 この救助の種類は、(第23条)
1.収容施設(応急仮設住宅を含む。)の供与
2.炊出しその他による食品の給与及び飲料水の供給
3.被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与
4.医療及び助産
5.災害にかかつた者の救出
6.災害にかかつた住宅の応急修理
7.生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与
8.学用品の給与
9.埋葬
 とあり、「埋葬」があります。

 この「埋葬」は、遺体の収容、安置、検案、納棺、火葬場への搬送、火葬、骨壺の費用とみなすことができます。
 あくまで応急的に必要な救助に限定されるので、きちんとしたお葬式をあげる費用や宗教者へのお礼等の費用は含まれません。
 また、市町村が棺、骨壺等の物品を手配して現物支給したり、火葬場までの遺体の搬送費用等の作業費を負担することがあります。

 しかし、事情があってすべてを市町村ができないものがあります。そのため「前項の規定にかかわらず、救助を要する者(埋葬については埋葬を行う者)に対し、金銭を支給してこれをなすことができる」とあります。

 今回の震災では火葬までの葬儀会館への安置や、納棺作業、遠隔地での火葬の費用等がありました。被災地の状況によっても市町村が直接救助ができたり、できなかったりの差がありました。
 このため各自が葬儀社に頼んで行ってもらった費用については領収書か請求書を添付して住民が市町村に請求することになります。

 今回の震災では先に葬儀社に被災者が支払って、明細書付きの領収書を添付して市町村に請求して住民に現金で支払われましたが、明細付きの請求書でも可能です。
 但し、今回は各市町村も葬祭業者も災害救助法の救助対象について理解が充分に行き届いていなかったので、実際には市区町村や葬祭業者によっての差が出ました。今後はこれを教訓に理解が統一されることでしょう。念のために市区町村に事前確認をしてください。

 今回の震災では、市区町村指定以外の遠隔地の火葬場への搬送費も後から認められました。また市区町村によっては約20万円(生活保護への葬祭扶助と同等程度)が埋葬費として支給されました。
 災害救助法の適用地区とするのは都道府県が決めますが、厚労省が適用基準を作っています。「災害により市町村の人口に応じた一定数以上の住家の滅失がある場合等(例 人口5000人未満 住家全壊30世帯以上)に行う」等。

 都道府県が全葬連(全日本葬祭業協同組合連合会)、全互協(全日本冠婚葬祭互助協会)、全霊柩(全国霊柩自動車協会)等の団体と支援協定を締結している場合には、協定に応じて都道府県が支援団体に支援を依頼し、その費用は都道府県から支援団体に直接支払われます。
 市町村が直接支援した費用については原則都道府県が支払います。
 国は都道府県の負担額の9割を原則として上限として負担するとなっていますが、災害の種類や程度によって異なります。

 災害救助法は東日本大震災のような広域な災害だけではなく、地域を限定して台風、大雪等の災害でも適用されます。
 今回の大震災では葬祭業者の考えに相違もあり、被災者に一切請求しなかった例、住民に過大な請求をした両例がありました。

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