葬儀Q&A

Q103 「後見制度」とは?

 

Q.近所で一人暮らしをしている兄の認知症が進行し、民生委員の方が「後見を申し立てたら」とアドバイスをしてくださいました。どういう制度か教えてください。(79歳女性)

A  この場合、民生委員の方がおっしゃったのは「法定後見」のことだと思います。すでに判断能力が不十分となった人への後見を「法定後見」と言います。判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」とあります。いずれも家庭裁判所に申し立て、成年後見人、成年保佐人、成年補助人が選ばれます。後見(保佐、補助)人は本人の利益を考え、本人に代理して契約等の代理をしたり、本人の法律行為に同意したり、知らずに行った法律行為を取り消したりして、本人を保護、支援をします。

「補助」は、軽度の精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症等)で、日用品の購入など日常生活への支障が特にないが、本人が法律行為に不安を感じ、補助の範囲を定めて、本人が申し立て、あるいは本人が申し立てに同意した場合です。家庭裁判所は補助人を選定し、保護が必要な法律上の行為の同意権、取り消し権、代理権を与えます。たとえば本人が10万円以上の買い物、契約をした場合、補助人の同意が必要で、補助人には取り消し権がある、などです。2011年には1144件の申し立てがありました。

「保佐」は、「補助」よりも判断能力の欠如が著しく、中度の精神障害で、保佐人の同意なくして定められた範囲の法律行為ができない場合です。
 法務省の挙げた例を挙げておきましょう。本人は1年前に夫を亡くした後、一人暮らしをしていた。以前から物忘れが見られたが、最近症状が進み、買物の際に1万円札を出したか5千円札を出したか、わからなくなることが多くなり、日常生活に支障が出てきた。ここで長男夫婦と同居し、長男を保佐人にし、長男に法律上の行為の代理権を付与した。
 保佐人も法律上の代理権の範囲は本人が理解している必要があり、日常の買い物程度は本人が行うことを認めています。

 2011年には3708件の申し立てがありました。
 以上の「補助」も「保佐」も日常の買い物程度は可能で、補助や保佐の範囲も定めています。
 これに対して「後見人」と呼ばれるものは、補助(軽度)、保佐(中度)よりも認知症、知的障害、精神障害が進み、判断能力が欠けている状態が通常である人を保護、支援する制度です。日常的な買い物程度を除き、法律行為については、後見人に代理権、同意権、取り消し権を広く認めた制度です。
 法定後見が最も多く、11年には2万5905件の後見開始の申し立てがありました。

 法定後見は、すでに判断能力が衰えたり、限界があったり、なくなった人を保護、支援する制度です。本人、家族の申し立てを待っていては保護されないケースがあるため、家庭裁判所への申し立ては、本人、配偶者、四親等以内の親族に加えて検察官、市町村長ができる、と定められています。つまり行政に地域住民を保護、支援する権限を与えています。

 実際に申し立てた人は、本人7%、配偶者7・7%、親6%、子37・6%、兄弟姉妹13・9%、その他親族13・8%、市区町村長11・7%、その他、となっています。
 以上、「法定後見制度」について説明しましたが、ほかに「任意後見制度」があります。本人が老齢化等で認知症になるなどして将来判断能力が失った際の後見人、後見の内容を定めて公正証書を作成しておく制度です。合わせて「成年後見制度」と言います。「成年後見」というのは、本人が判断能力を失ったときに支援する制度のことです。

 旧来の禁治産・準禁治産制度に替わるもので、2000年4月1日に介護保険法と同時に成年後見関連4法が施行されました。
 成年後見制度は、成立からわかるように、高齢者の増大が認知症高齢者の増大を招き、これを何とか保護しないといけない、ということでできた制度です。禁治産・準禁治産制度は行政処分の措置ですから、本人の自己決定権の尊重、身上配慮などはなく、差別的なものでした。

 最高裁事務総局家庭局によると、法定後見は2007年から11年までの5年間に11万7476件の後見開始の申し立てがありました。任意後見の開始を示す任意後見監督人の選任申立ては5年間で2647件となっていて後見開始全体の2・2%にすぎません。

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