Q.母は先日87歳の誕生日を迎えました。新聞に女性の平均寿命は86・41歳とあったものですから、母は「さあ、平均寿命も超したから、そろそろお父さんに迎えに来てもらおうかしら」と言ったら、弟が「母さんまだ平均まで生きていないよ」と言いました。平均寿命は平均じゃないのですか。(61歳女性)
A最新の平均寿命2012(平成24)年の平均寿命は、男性が79・94年、女性が86・41年となっています。これは「平均寿命」と言っていますが、0歳児の平均余命です。したがって現在の87歳の人の平均とは厳密には違います。しかし、0歳児の平均余命は「すべての年齢の死亡状況を集約したもの」ですから、一つの目安にはなります。
いちばん実感的に「平均」に近いのは「寿命中位数」というもので、半分の人が生きる年齢のことです。寿命中位数で見ると、男性は82・95歳、女性は89・25歳となっていて、平均寿命より少し高くなっています。
ちなみに85歳の人の平均余命は、男性が6年、女性は8・1年となっています。現在85歳の生存している女性が残り平均生きられる年齢は93歳となります。
ですから弟さんが言った「平均」が「寿命中位数」のことでしたら、お母様の歳の平均は後2年あることになります。
でもこれらはすべて目安であって当然にも平均を超して生きる人もいれば、平均に達しないで死亡する人もいるわけです。
個人的なことを言えば、私の母は5人きょうだいでしたが、私の伯母である一番上の姉、2番目の姉はいずれも50代で死亡し、3番目の母は98歳、次の弟は85歳、いちばん下の弟は第二次世界大戦でフィリピンで死亡しているので22歳でした。いかに実人生は統計上の平均と異なるかがわかります。
また元気でいられる年齢というのもさまざまです。自覚的な衰えをアンケートで尋ねると男性は70歳、女性は74歳程度というのが「平均的な回答」です。
しかし介護保険のサービスを受けない平均の年数は、男性77年、女性83年となっています。
もしお母様が87歳で、それなりに弱っていても介護保険のサービスを受ける必要がないなら、平均に比べると、お元気な部類に入ります。
これもあくまで「平均」の話で、40代で介護のサービスを必要とする人もいれば、100歳を超えてもお元気な方がいらっしゃいます。
また、個人的は話になりますが、女性のほうが長寿という統計がありますが、68歳という私の同級生では死亡した人数は男性より女性が多いのです。いかに統計と実際ではくいちがうことが多いかを示しています。
いま「高齢化率」という言葉が注目されています。
これは65歳以上人口が全人口に占める割合です。
一般に「高齢化社会」と言われるのは高齢化率が7~14%まで、14%を超えると「化」が取れて「高齢社会」、さらに21%を超えると「超高齢社会」と言われます。
日本は2007年にすでに高齢化率が21%を超えて「超高齢社会」に入っています。12年の高齢化率は24%を超えてほぼ4人に1人が高齢者となっています。
高齢化の波は日本特有のものではありません。アジアでも韓国、中国が高齢化傾向にあり、欧米諸国も高齢化の道を歩んでいます。
日本は将来推計では2025年に高齢化率が30%を超えるだろう、と予測されています。しかし、都道府県別に見ると、12年現在、秋田県、島根県、高知県の3県がすでに30%を超えています。
7年後の2020年のオリンピックが東京で開催されることが決まりました。前回の東京オリンピックは1964年でした。この年の日本の高齢化率はほぼ6%でした。当時は「高齢化」以前の「若い国」だったことがわかります。
しかし、考え方を変えれば、前の東京オリンピックの時は「バリアフリー」という考え方もまだ一般に定着していなく、高齢者や障害者には生きにくい社会でした。現在は障害者や高齢者向けの政策には、まだまだ課題はあるものの、ずいぶんと優しい社会になってきています。
健康寿命と深く関係するのが「前期高齢者」と「後期高齢者」の区分です。高齢者の中でも特に75歳以上を「後期高齢者」と呼んで区別しています。
2012年の75歳以上人口は、1519万人で総人口の11・9%(男性9・4%、女性14・3%)です。
今後は「高齢者虐待」もさらに問題化するだろうと見られています。