葬儀Q&A

Q105 「遺族代表挨拶」は喪主でないといけないの?

 

Q.父は早く死亡し、母がすっかり弱り、今は娘である私が介護しています。きょうだいはいません。母の葬式では私が喪主を務めることになると思いますが、出棺の際の挨拶は私がどうしてもしなければならないのでしょうか?(75歳女性)

A結論から言えば「どうしても」しなければならないものではありません。
 今の一般的なお葬式では、「喪主」が挨拶する場面が5回あります。
1通夜の終わった後に会葬者へ、2通夜で弔問客等に食事等を振る舞う場合には、その中で、3葬儀が終わり出棺するに際して、4火葬が終わり、遺骨を安置しての法要と一般に続けて行われる初七日法要を終えた後開始時に、5上記4の会食を終えての最後に、です。

 式次第に書かれるとすれば、上記3の出棺に際しての挨拶だけでしょう。これもかつては「喪主挨拶」と書かれることが多かったのですが、近年は「遺族代表挨拶」と書かれることが多いように思います。これも出棺前ではなく、葬儀式の一般会葬者の焼香の前であったり、葬儀式の終了時であったりもします。

 東北地方等で、火葬を葬儀式に先立って行い、遺骨を安置しての葬儀、「骨葬」の習慣がある地域では、「出棺前」ではなく、葬儀式の最後や一般会葬者の焼香に先立って「遺族代表挨拶」がくることが多いようです。
 北海道では、「葬儀委員長」を町内会長や元校長等の地域の名士が務めることがあり、出棺前挨拶は喪主ではなく葬儀委員長が務めることもあります。もっとも北海道でも近年は葬儀委員長を葬儀会館の館長が務める等の形骸化も見られるようです。

「喪主挨拶」が「遺族代表挨拶」へ名称変更されるのは、戦後、男性が死亡した時の喪主を配偶者である妻が務めることが多くなったという事情も影響しているように思います。
 最も悲嘆が強い人、高齢の女性が喪主を務めるケース等を配慮して、各家族事情によって挨拶する人を決めていい、という考えがあるように思います。ここから進んで「遺族は大小いずれにしろ悲嘆を抱えているのだから、遺族に無理して挨拶をさせることはない」という意見も最近は出ています。

 また、人前での挨拶には一般の人は慣れていないという事情を配慮をすべき、という意見もあります。しかも、たいへんな時に行うのですから、挨拶は、簡単で短くともいいし、予め原稿を書いて読み上げるというのも可とされています。
 いずれにしろ、葬式や法要に参列、会葬いただいた人たちに遺族側がお礼の言葉を述べる機会があっていいだろう、ということから位置づけられたもののようです。

 もっとも戦前には、跡取りが喪主とされ、喪主が子どもであることもあったので、実際に遺族を代表して葬式に責任をもつ親族が「施主」となり、挨拶も喪主を横に置いて行った、という例もあったようです。
 地域によっては「喪主」を「施主」という名で呼ぶこともあります。しかし、意味的に「喪主」「施主」を使い分けしているとは必ずしも限らないようです。

 戦前は、「喪主」は「戸主」または「跡継ぎ」が務めるものとされていましたが、戦後の民法では家制度はなくなり、定まっていません。実際にも子どもが数人いる場合に、長男だけが喪主を務めるのではなく、子どもが複数共同で務めるケースもあります。また遺族側の事情で死亡した本人のきょうだい、娘の夫等が「喪主」「施主」を務めることもあります。

 戦後は「誰が喪主を務めるべき」「誰が挨拶すべき」ということは定まっていないため、遺族の事情に応じて柔軟に決めてよいように思います。友人代表が遺族の代理で務めるというのもあり得るでしょう。

 民法で解釈するならば「祭祀主宰者」となります。この場合、本人が生前何らかの形で指定した人がいればその人、特に指定した人がいなければ「慣習による」とあります。戦前の長子承継を考慮したものと思われますが、戦後約70年になるので、慣習も変化し、それぞれの家族の事情でいいと思います。もっとも家族内で意見が異なり紛争になるようでしたら、民法の定めに従い、家庭裁判所で決してもらいます。

 会食の最初、最後に遺族代表が挨拶するのは、会食の席が遺族がお世話になった方々へのお礼の場という設定からです。
 挨拶者は定まっていませんが、葬祭業者が代行するのはいきすぎです。宗教者が遺族を配慮して代行して行うならば理解できます。

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