葬儀Q&A

Q106 葬式で音楽を流してよいか?

 

Q.母が終末期にあります。音楽が好きで、息子の私に自分で選曲したCDを託しています。菩提寺の浄土宗のお寺にお葬式をお願いすることになりますが、式中その音楽を流せますか?(55歳男性)

Aお葬式で音楽、というのは今ではとても自然なものになっています。お葬式といっても、すべての時間、僧侶がお経をあげているわけではありません。式中は別にして、音楽を流す機会はずいぶんとあるものです。

 お葬式の日程を考えてみましょう。
 病院で死亡した場合、90年代までは、葬儀社に頼んで自宅に遺体を搬送してもらい、一晩は自宅に安置するのが一般的でした。今は斎場(葬儀会館)に搬送され、安置されるケースが多くなっています。

 いずれにしても遺体を安置し、僧侶に枕経をあげてもらいます。枕経時には、そこにいる家族全員が遺体を囲みます。衣服をあらためる必要はありません。ジーパンでも割烹着を着たままでもかまいません。

 エンバーミングをする場合には移送してエンバーミングしてもらいます。まだエンバーミングの施設が整っていない地域が多いので、その場合には早めに納棺するとよいでしょう。納棺し、ドライアイスを入れると棺は冷蔵庫状態になります。ドライアイス処置をしたからといって遺体が腐らないというわけではありません。しかし腐敗を遅らせる効果があります。買ってきた魚が腐らないようにすぐ冷蔵庫に入れておくのと原理は一緒です。

 その日は家族だけで看取ります。だいたいが翌日が通夜、翌々日がお葬式、告別式。告別式が済んだら出棺して火葬場に向かいます。
 東北地方等では、お葬式の前に火葬を済ませ、お葬式は遺骨を安置して行われます。

 これがお葬式の概略です。当日、遺体を安置した段階でも音楽は流せます。翌日の通夜でも、式が始まる前の時間、式が終わった後の時間は音楽を流せます。お葬式の日も、式の前、式が終わって、柩を前に出してお別れする時間は音楽を流せます。

 お葬式というのは3~4日かけて行われるので、音楽を流していい時間はたっぷりあります。
 私が経験し、差配した従妹の葬式の場合、予め従妹の希望した音楽の音源を葬儀社に送っておきました。そして通夜の式(そういえば、従妹の菩提寺も浄土宗でした)の始まる前の時間、式が終わった後の時間に葬儀社の人がエンドレスで従妹の選曲した音楽を流してくれました。
 今は音楽を使うことが一般的になっていて、多くの葬儀社がさまざまなジャンルの音楽を用意できる状態にあります。曲さえ指定すれば用意してくれるところが多いです。

 従妹の時は私がネットで音源を取得し、ネットのファイル転送サービスを用いて葬儀社のメールアドレスに送りました。
 お葬式もそうです。始まる1時間前からその音楽を流しました。式中は流しませんでしたが、式が終わり、棺の蓋を取り、お花を入れてお別れする時間、そして出棺を待つ間、従妹の選曲した音楽をずっと流し続けてもらいました。

 お葬式に来られる方は、早い場合は2時間前くらいから集まり始めます。ですから式の前の時間はけっこうあります。
 私は来られた方々にできるだけ挨拶ををするようにしました。従妹との関係をたずね、「お世話になりました。きょうはわざわざお出でいただきありがとうございました」と言い、「今流れている音楽はすべて生前に彼女が選曲したものです」と伝えました。すると来られた方々も、「あ~、この歌、彼女がよく歌っていました」などと話してくれ、特別な想いで音楽に耳を傾けてくれました。

 式も、僧侶の方が取り仕切る葬儀式と、その後の告別式を区分けするのであれば、告別式の段階から音楽を流すことができます。
 音楽というのは人によって趣味が違いますので、司会者に一言、
「ただいま流れている音楽すべてが、生前故人が、お葬式の時に流す曲として選曲していたものです」
 と言ってもらいます。
 するとその音楽が特別に意味のある音楽になります。

 故人が選んだものであれば、それが荘重なクラシックでなくとも、民謡や歌謡曲でもかまいません。ジャズはよくかかります。
 遺影写真も従妹はお気に入りの1枚を選んでありました。このことも会葬に来られた方に伝えると、「あ、いい写真ね」と言ってくれました。
 写真、音楽、お花は「故人を想い、弔う」ために大きな働きをすることを実感したものです。

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