葬儀Q&A

Q107 愛犬の遺骨を一緒に納骨できる?

 

Q.5つ年上の姉が死亡し、葬儀も終えたのですが、納骨がいつか連絡もありません。姪に訊いたら「母のかわいがっていた愛犬がもう死にそうなの。ケン(犬の名))が死んだら、その骨の一部を姉の遺骨に混ぜて納骨したいの」と言うではありませんか。そんなことをして違法ではないのですか。(80歳女性)

A遺骨を墓に埋蔵する場合には墓地にある墳墓、となっていますが、これは人間の場合のことです。犬などのペットについては定めがありません。
 私も子どもの時と、結婚した後に猫を飼っていました。猫が死んだ時には庭の一部を掘って猫をそのまま土葬しました。悲しくて、涙をこぼしながら懸命に穴を深く掘り、穴の底に横たえ、土を埋め戻し、堅く固め、上に割り箸を立てた、という記憶があります。合計4匹の飼い猫の埋葬をしました。その時の気分は死んだ猫の顔と共によく覚えています。
 猫の埋葬は、私ができる精いっぱいの猫への愛情行為でした。

 一緒に生活した犬や猫(最近はその他の動物もあるようですが)、彼らの生命は人間より短命なので、ペットの葬送は飼い主にとって痛切なものです。
 ペットは懐きますし、こちらの感情を理解してくれているのではないか、と思い、万感の気持ちを込めて抱きしめる、というのはたびたびです。ある時には人間の他の家族以上に愛情対象になります。

 ある高名な学者が、「ペットロスなんて嗤っていたが、自分の飼っていた犬に死なれて、わかった。今では『ペットロスなんて』と言っていた自分が恥ずかしい」と新聞媒体を使って「告白」していました。
 ペットに対する感情はさまざまです。そもそも飼った経験のない人には「何?ペットロス?」と理解不能なことでしょう。「一度飼い犬に死なれて辛かったから、もう二度と飼わない」と言っている人も少なくありません。

「祖母さんの死には泣かなかったくせに、自分の飼い猫に死なれて号泣しているなんてわからない」と言う人もいます。
「人間に冷たいくせに」というのは多くの場合、必ずしもあたっていません。そもそも比較の対象ではないでしょう。
 祖母の死には、「身のまわりのこともできなくなって、毎日、痛いし、辛い生活をしていたのだから、もう苦しまなくてもいい」と祖母を思っての納得もあり、泣かなかったのかもしれません。

 高齢の方が飼い猫、飼い犬に愛情をいっぱい振りかけておられるのを見る、知ることが多いです。犬、猫が唯一の話し相手、というケースも珍しいことではありません。
 墓地によっては「人間の遺骨に限る」と条件づけている例もあるでしょう。でも骨壺に混ぜてしまえば、秘密に行う限り判明することはないでしょう。そして肝心なことは、それで傷つく人がいない、ということです。

 法の抜け道を言っているのではなく、「あれだけ可愛がっていた犬や猫なのだから、一緒にしてやりたい」と家族が思うのもおかしくない、まっとうな人間感覚だと思います。そこで人間の生命の重さとペットの生命の重さを量り比べる、というのは愚の骨頂のように私には思えます。
 あなたがそのことを誰彼に言うことで、ペットに対する感覚を共有しない人から不満、反発が起こるかもしれません。姪御さんはあなたを信頼して秘め事を話してくれたのですから、あなたも姪御さんのお母さんへの愛情を大切にして心の裡にしまっておいていいのではないでしょうか。納骨に期限は定められていないのですから。
 もっとも、近年は「ウィズ・ペット」という墓も売り出され、人気になっています。

 理屈を言うならば、人間の遺骨と一緒にペットの遺骨を埋蔵することは、墓地は人間の遺骨を埋蔵することを目的としているのですから、ペットの遺骨は「副葬品」という扱いになります。お墓にお父さんの大切にしていた万年筆を一緒に入れる行為と一緒、ということになります。
 ペットを飼うかどうかは自由な行為です。好きな人もいれば嫌いな人もいるでしょう。他人への迷惑行為にならなければ、その好き嫌いを法的に問題にする必要はありません。その犬が近所の人に飛びかかり、迷惑になる、というならともかくです。
 その人個人の自由な行為は万人が納得する必要はありません。社会的に迷惑になれば別という範疇内のことですが。たかがペットですが、考えれば深い問題でもあります。

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