葬儀Q&A

Q108 お寺が改葬を拒んでいるのですが…?

 

Q.田舎に両親だけで住んでいましたが、父が3年前に死に、母も足腰が弱くなったので、母を東京に連れてきました。墓参りしようにも列車で往復4時間。墓をこちらに移転しようと思い、墓の菩提寺に話したところ同意してくれません。どうしたらいいでしょうか(60歳女性)

A地方に住んでいた両親の一方が死亡し、もう一方が一人暮らしをしていたが、心身の状態が悪化し、子どもが親を引き取る、というのはよくあるケースです。母親が残るケースが多いのですが、地方にある墓をお参りしようにも、困難になり、子どもの住居の近くにお墓を引っ越しさせたい、と考える人もいます。
 お墓の引っ越しのことを法律的には「改葬」と言います。
 改葬の手続きは、元のお墓のある地の市区町村に「改葬許可申請書」を出し、その許可を得る必要があります。
 墓地、埋葬等に関する法律施行細則には、次のように規定されています。

第2条 法第5条第1項の規定により、市町村長の改葬の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を、同条第2項に規定する市町村長に提出しなければならない。
一、死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は、父母の本籍、住所及び氏名)
二、死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)
三、埋葬又は火葬の場所
四、埋葬又は火葬の年月日
五、改葬の理由
六、改葬の場所
七、申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者(以下「墓地使用者等」という。)との関係
2.前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一、墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあっては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)
二、墓地使用者等以外の者にあっては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本
三、その他市町村長が特に必要と認める書類

 と規定されています。けっこう面倒な書類で、墓に入っている一人ひとりについて細かく記載しなければいけないので、行政書士等に依頼するのが現実的でしょう。

 改葬で実際に問題になるのが「墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面」です。従来の墓地の管理者からこれまで遺骨が埋蔵(墓地)または収蔵(納骨堂)されていたことを証明する書面を得ることです。墓地が公営墓地の場合には事務的に済ますことができるのですが、墓地が寺の墓地の場合、トラブルになるケースがあります。
 お寺にとっては寺を支えてくれた檀家が1軒なくなるというので、すぐには了承しないケースがあります。そこで「離檀料」という名の金銭の支払いが問題になることがあります。

 ここでの問題は2つあります。
 第1は、寺の墓地は檀家故に寺が檀家に使用を許可してきた、という事業墓地とは異なる性格があることです。改葬を考える人は事務的に処理するのではなく、寺に理由を話し了解を得ると共に、できる範囲でいいのですが、これまで使用を許してくれたことへのお礼をすることは道義的に当然あっていいだろうということです。また、墓を移転するということは離檀を意味せず、檀家としてこれまで同様に寺との関係を維持するという選択もあっていいでしょう。

 第2は、お寺側には金銭等を条件にして埋蔵(収蔵)証明書の発行を拒否する権利はない、という法的事実です。証明書は事実のみ証明するもので、許可証ではないからです。
 また、どの墓地でも共通することですが、改葬するにあたって、元の墓地の墓石等を撤去し更地にして戻す必要があります。墓石業者に訊くと、一般に更地にする費用は1平方メートル10万円くらいとのことですから、だいたい1坪程度ですので30万円程度かかります。

 また、改葬先の墓地等を記入することが必要です。この改葬先では独立型のお墓である必要はなく、永代供養墓(合葬墓)、樹木葬墓地等も考えられます。いったんどこかの納骨堂に預かってもらった後に散骨(自然葬)することも可能です。改葬先についてもさまざまな選択肢がある、ということは理解しておきましょう。

広告
葬儀Q&Aに戻る