葬送用語事典

ま〜も

まいそう(埋葬)

死体を墓に埋めること。土葬のこと。土葬も法律的には認められているが、都道府県の墓地に関する規則で制限されることが多い。日本では1%が現在でも土葬されている。

まえじょく(前卓)

同「前机」。

まえつくえ(前机)

仏堂の須弥壇(しゅみだん)の前に置かれ、三具足や五具足を置く机のこと。同「前卓」。

まくらかざり(枕飾り)

死後、遺体を安置した後に、遺体の側を荘厳(しょうごん)するもの。小机に白布をかけ、香炉を中央に、向かって右に燭台(ローソク)、向かって左に花立ての三具足を供える。このほか浄水や白いご飯(または団子)を供えたりすることもある。ご飯は一膳飯といい、山盛りにし箸を立てる。このとき1本のところと2本のところとがある。浄土真宗ではご飯などは供えない。

まくらぎょう(枕経)

死亡直後、遺体を安置した枕元で檀那寺の僧侶が経を読むこと。中世には臨終時に枕元で本人に読み聞かせた臨終経であったが、江戸時代以降は死後の所作になった。宗旨人別帳が法制化されて以降は不審な死ではないかとの検死の意味をもったこともある。今も死後よまれるが、葬式を出す前までは死者は生きている者としての扱いをするので、あくまで本人に対して読み聞かせるという前提に立つ。死亡直後で混乱状態にある遺族をサポートする意味もあろう。通常は枕直しをし枕飾りをしたところで行われ、その後に戒名(法名)のこと、葬式の手順など打ち合わせる。都会では形骸化して通夜に合わせて行うこともある。

まくらだんご(枕団子)

死後すぐ作る。上新粉を蒸すか、茹でるかして作られる。三方に白紙を敷き載せて枕元に供える。六道にちなんで6個、浄土に生まれるとして7個というので、6個ないし7個供える。参照「枕飯」。

まくらつくえ(枕机)

枕飾りをする小机。

まくらなおし(枕直し)

死者を安置する際に、北枕または西向きにすること。いずれの方向も適切でないときは部屋の右手に頭がくるようにする。釈尊の涅槃に入った時の頭北面西右脇臥(ずほくめんさいいきょうが)に倣ったとされる。

まくらばな(枕花)

枕飾りの傍に供える花。死亡の通知があったらすぐ届けるもの。葬儀などで使われる供花スタンドと異なり背が低い。遺体を安置している座敷の畳の上に置かれるため籠形状が多い。

まくらめし(枕飯)

死亡直後に新しく炊いたご飯を個人愛用の茶碗に高く盛りつけ枕元に供える。箸を2本または1本上から立てることが多い。中には横に2本揃えて置くケースもある。枕団子も枕飯も両方供える地域と、いずれか一方だけを供える地域とがある。本来は再生を願っての儀礼であろうが、死者が善光寺や霊場に旅する弁当だとの解釈が行われてきた

まつごのみず(末期の水)

医師の死亡判定直後に死の現場に立ち会った者により行われる。湯呑み茶碗に水を入れる。割り箸の先を脱脂綿で巻く。この割り箸の先に水を含ませ、一人ひとり順に死者の唇を潤す。血縁の近い順にすると言われることもあるが特に拘る必要はない。割り箸の代わりに綿棒や新しい筆を用いたり、樒の葉を用いることもある。

まもりがたな(守り刀)

枕直しの際に布団の腹部の上に守り刀を置く。武士の枕元に刀を置いた名残、鎮魂のため、魔除けのため、などと説明されることがある。今は縦に置かれることが多いが、地域により刃先を足元に向けたり、反対に顔に向けたり、地域により考え方に大きな相違が見られる。神道では枕元の小机の上に置く。

まわししょうこう(回し焼香)

それぞれの席に香炉を回し、その席で座ったまま焼香するという方式のこと。葬儀時には寺院など畳に座っているときは遺族・親族席では回し焼香をすることもある

まんちゅういん(満中陰)

四十九日(中陰)が終わること。七七日(四十九日)のこと。

みつぐそく(三具足)

法要時の仏前供養の基本形。香炉を中心に左に花立て、右に燭台を配する。葬儀では三具足が多い。「五具足」参照。

みっそう(密葬)

告別式を行わずに近親者だけで葬式を営むこと。

みてぐら(幣帛)

同「幣帛(へいはく)」

みやがたれいきゅうしゃ(宮型霊柩車)

霊柩車の一種。宮型を象った特殊仕様車で主として火葬場への遺体搬送に用いられる。特別車になる。霊柩車の日本への登場は大正4年。アメリカの装飾型霊柩車の輸入から。大正9年頃に輿を車の荷台に載せて運んだことから造形された。昭和初期から利用が増える。但し、戦前の利用は大都市のみ。戦後の1955年以降に全国に普及した。これにより葬列が廃されるようになる。霊柩車を先頭に車を連ね火葬場へ行くことを「葬列」と称することもある。

みんえいぼち(民営墓地)

宗教法人や財団法人などの公益法人が経営する墓地で、事業を目的としているので事業型墓地といわれる。宗教法人が経営しても、当該宗教法人の信者対象ではなく、使用者の宗旨を問わないで広く一般にも使用者を求めている墓地は民営墓地に分類される。

むえんふんぼ(無縁墳墓)

承継者が不在となった墓。一般に承継者を失った墓は処分の対象となる。官報に記載する、1年間墓所に立て札を立てて縁者の申告を待つ、という条件で墓地の管理者は無縁墳墓を撤去するという改葬をすることができる。この場合、遺骨は無縁塔などに合葬される。無縁となりすぐ改葬できるわけではなく、権利関係の民法上の条件をクリアする必要があり、5年程度はそのままの状態で保全されることになる。

むかめいばか(無家名墓)

家墓の変形。家名の代わりに「夢」「偲ぶ」などの言葉を刻んだ家族墓のこと。

むしゅうきょうそう(無宗教葬)

「無宗教葬」とは、無信仰の葬儀を意味しない。それも含むが、「特定の宗教宗派の方式に依らない葬儀」を意味する。行政の長などが亡くなり、特定の宗教に拠らないで市民葬などを行うときはこの方式となる。近年は「自由葬」とも言う。無宗教の「お別れ会」もこれと同じ形である。定まった方式がないのが特徴である。

みさ(ミサ)

カトリックで主の体と血を象徴するパンとぶどう酒に預かる儀式。プロテスタントは「聖餐式」。

みとり(看取り)

死を看取ること。広くは終末期にある家族が死に至るまでを看病すること。

みんえいぼち(民営墓地)

宗教法人や財団法人などの公益法人が経営する墓地で、事業を目的にしているので事業型墓地とも言われる。宗教法人が経営しても、当該宗教法人の信者対象ではなく、使用者の宗旨を問わないで広く一般にも使用者を求めている墓地は民営墓地に分類される。

も(喪)

元は「死者を哀哭する」意で「そう」と読んだ。ここから「死者を哀悼する礼」である「喪礼(そうれい)」、「人をうしなう」こと、「死を悲しむ」などの意味で使われた。現在は「喪(も)」は死者を悲しみこもる「喪中」と同義に使われ「喪(も)に服す」などと使用される。英語のグリーフワークが死別の悲嘆にある遺族のなす悲嘆作業を意味することから、これを「喪(も)の作業」と訳し、「死別を悲しむ作業」という意味を付与することもある。

もがり(殯)

古代では死者をすぐ葬らず、死者を別小屋に安置し仕える風習があり、これを「もがり」と称した。死者を手厚く扱う意味と共に、死の境界線が明らかでなかったため骨化することを待つ意味もあった。火葬は骨化を早める葬法として薄葬(はくそう)として受容された面がある。通夜はこの名残の面がある。

もしゅ(喪主)

葬儀において遺族を代表して祭祀を主宰する者。遺言で祭祀主宰者の指定が可能。指定がなければ慣習により遺族が協議して決める。紛争になった場合には家庭裁判所で決める。参照「施主」。

もしょう(喪章)

遺族関係者が喪中であることを示す黒の印。胸部または左腕上部につけたり、巻いたりする。

もちゅう(喪中)

喪に服していること、その期間。死者との関係によりいろいろだが、一般に死後1年を言う。

もふく(喪服)

現在は喪中にある人のみならず葬式の弔問者も着することが多いが、本来は喪に服している者が着する着物の意。奈良時代には「素服」という質素な白い服を近親者は着用した。日本の喪服の色は明治30年代までは白。死装束と同色であり、遺族は死者と同じ状態で葬式を出した。明治30年代に皇室の葬儀の折り欧化政策の中、欧米の喪の色である黒が喪の色とされ、大正期以降に黒が普及した。現在でも喪主は白服を纏う地域もある。戦前の弔問者はむしろ正装し、喪服を纏うことはなかった。弔問者までが喪服を着用するようになったのは1960年代以降で、黒色が礼服と認識され、これに白ネクタイが慶事の礼服、黒ネクタイが弔事の礼服というスタイルが定着したことによる。喪服という概念が変更された結果である。

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