葬儀や墓の知識

墓の基礎知識

 現在の墓、墓地について述べます。墓地については「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)によって規定されています。

◆墓石の形態
 
 現在、主として利用されているのは「和型」と言われる3層の構造の墓石で、江戸時代に生まれた形式です。最近ではこれに「洋型」と言われる形態が加わっており、部分的ですがオリジナル・デザインの墓石もあります。昔の形態をとどめる五輪塔形態も一部に見られます。

◆墓埋法に規定された「お墓」
 
 墓埋法によるなら、遺体または遺骨を納める場所は「墳墓」と「納骨堂」の2つに分類されます。
 
1)墳墓
「墳墓」とは「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設」とあり、ここで言う「埋葬」とは「死体を土中に葬ること」つまり土葬のことを言いますから、土葬墓、火葬墓を総称して「墳墓」と規定されています。
 「墳墓」とは個々のお墓のことです。日本では現在火葬が98%と圧倒的ですが、土葬も法律的には認められています。
 
2)墓地
墳墓を設ける区域が「墓地」で、これについては「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域」と規定されていて、第4条に「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と禁止されています。
 つまり、お墓は勝手に設けることができず、都道府県知事の認可を受けた墓地にしか設けることができないと決められています。
 
 墓地経営は、事実上、自治体による公営か、財団法人、宗教法人のいずれかでないと認められません。
また、法律的に土葬が認められているとしても都道府県が墓地の許可条件に「焼骨の埋蔵に限る」と条件をつければ、土葬は事実上不可能なことになり、一部の地域、特別な事情がある限りを除いて、現在では土葬は現実的には困難になっています。
 
3)納骨堂
 「納骨堂」とは「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設」です。
 したがって、お寺、教会といった宗教施設でも、納骨堂の許可を得ない施設では他人の遺骨を長期的に預かることができません。
 また、「他人の」とあるので自分の家族の遺骨を自宅に保管することは違法ではないと理解されます。

◆埋葬、改葬
 
1)埋葬、納骨には許可証が必要
 お墓に遺体を埋葬するとき、遺骨を埋蔵するとき、あるいは、納骨堂に遺骨を収蔵する(=預ける)ときには、許可証が必要です。これは、死亡届を出した自治体で交付される火葬・埋葬許可証です。遺骨の場合には、許可証に火葬済との証印を受けたものを言います。この許可証を墓地または納骨堂の管理者に提出します。
 
2)改葬にも許可証が必要
 「改葬」とはいったん納めたお墓または納骨堂から遺骨を他のお墓または納骨堂に移動させることです。この際、遺骨が納められている地の市町村から「改葬許可証」を受け、移動先の墓地または納骨堂の管理者に提出します。分骨や分骨した遺骨については改葬にはあたりません。

◆墓地の分類
 
 墓地は経営形態により、
 
   1 村落共有墓地
   2 寺院境内墓地
   3 地方公共団体による公営墓地
   4 民営霊園
 
 の4つに分類されます。
 
 村落共有墓地は古くから村落が共有して保持していた墓地を追認したもので、新しく認められることは事実上ありません。
 寺院境内墓地は、最初に寺院の檀信徒になるという契約があり、檀信徒であるから墓地の使用が認められるという関係にありますので、檀信徒として寺の維持その他の義務を負います。
 公営墓地は、自治体の条例その他で使用条件が定められ、使用権を取得するものです。
 民営霊園は、管理者と使用者が対等な契約に基づいて使用権を取得するものです。名前は宗教法人が運営する墓地であっても実質的には民営霊園と変わらない墓地も多数あります。

◆お墓の使用権
 
 一般にお墓を取得することを「お墓を買う」と言いますが、厳密に言えば「墓地を使用する権利を取得する」ことです。
 権利関係は、墓地の土地は墓地の運営主体の所有物件で、個人にその使用権があり、墓石は個人の所有物件、となっています。
 改葬する際には、一般には、自ら墓石を処分し、更地にし、墓地使用権を返還し、新たな移動先の墓地使用権を取得します。墓地使用権を返還する際には、使用権入手費用は原則として返還されることはありません。むしろ墓石撤去費用など要することが一般的です。(最近では入手費用の一部が返還される霊園もあります。)
 お墓の取得にあたっては、使用権入手費用(一般に「永代使用料」と言う)、墓石建設費が必要で、このほか継続的に管理料が必要です。
 使用権の名称が「永代」となっていても、管理料の支払いが一定期間途絶えると使用権が消滅し、墓石は撤去され、無縁墳墓に合祀されます。(但し、改葬は縁故者調査や新聞による申し出催告など費用、金額がかかるため問題となっています。)

◆お墓の承継
 
 お墓の使用権者が死亡したとき、「お墓を継ぐ」必要がありますが、これを「承継」と言います。お墓は民法に規定された「祭祀財産」という性格をもっており、本人が指定するか、そうでない場合には「慣習により」定め、最終的には家庭裁判所が決します。
 戦前の家族制度が壊れ、家族形態が多様化したため、複雑な問題となっています。子供がいないため承継者がいないというケースも出てきています。民営霊園では、無縁化を避けるため「申請者方式」と言って、配偶者や直系の子供の範囲であれば申請者に継承を認め、後から問題となったら裁判所の判断に委ねる方式をとるケースが増えています。
 
 こうした社会的変化に対応して、有期限墓地や承継者がいなくても墓地が継続する限り存続する永代供養墓も出てきました。永代供養墓は、一定期間は墓を存続し、その期間が過ぎて承継者がいなければ予め定められた合祀墓(集合墓)に合祀するという方式が一般的です。最初から合祀する形態の永代供養墓もあります。

◆埋骨方法
 
 お墓の遺骨を納骨する場所は、「カロート」と称しますが、お墓への遺骨の埋蔵は、カロートに骨壺単位で収める方式と骨壺から遺骨を空ける方式とがあります。

◆散骨
 
 近年マスコミの話題となり、関心を深めているのが「散骨」です。遺骨を墓地または納骨堂に納めるのではなく、遺骨を粉末状にして、これを海や山などに撒く方式です。これを始めた葬送の自由をすすめる会はこれを「自然葬」と名づけました。
 墓埋法については散骨の規定がないことから散骨を適法とする解釈もあります。次に、刑法190 条の「遺骨遺棄」にあたるかどうかについては、「葬送の目的をもって節度をもって行う」という条件であれば違法ではないという解釈が有力です。だが、撒く地域の人々の感情の問題もあり、何らかのガイダンスが必要との議論もあります。

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