■葬儀の個人化傾向
この二~三年、特に大都市部において顕著になった傾向は、葬儀の個人化であると言ってよいだろう。
この「個人化」ということについて説明しておこう。「個人化」に対応する言葉は「社会化」である。
本人を中心に関係者図を描いてみる。
(図はここでは省略)
中心の本人に近くなるのが「個人化」であり、中心の本人から遠ざかるのが「社会化」となる。
ジャンケレビッチの分類に倣うならば、Aライン内が二人称(近親者)の関係で、Cライン(Bラインの外側)は三人称(他者)の関係である。Bラインは中間の二・五人称とでも言うべき関係である(*一人称は本人)。
葬儀の基本的な関係はBライン内である。本人の社会的な立場や家族の社会的な立場によって会葬者は増えてCのラインまで達し、これが広がっていく。
戦後の高度経済成長期は、故人を弔うことの指標が祭壇の大きさとなったが、もう一つは会葬者の多さであった。ちょうど明治中期に葬列の大きさが指標となったようにである。
その人、その人によって社会性は変化するものの、戦後、BのラインからCのラインへの拡大が基調となり、会葬者は増え続けた。
平均的な数字で表現すると、Aライン内が約二~三十人(五十人以内)、Bライン内が約百人、Cラインが約二~三百人(以上)であろう。
この拡大続けた社会化の流れが、バブル崩壊後、逆の向きである個人化に向けられるようになった。CラインよりはBライン、BラインよりはAラインへと。
そしてAライン内の葬儀を自覚的に行おうとするのが密葬志向である。
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