葬祭業とは何か?

1.マーケットとしての「葬祭業」

■葬祭業の市場規模は1兆2千億円?
葬祭業の市場規模は、公正取引委員会が04年に「葬儀サービスの取引実態に関する調査報告書」において「葬儀の市場規模を示す統計はないが、今回の事業者アンケート調査から一定の推測をすると、約7000億円となる」としている。この根拠は「葬儀専門事業者(3147社:総務省統計調査)及び冠婚葬祭互助会(320社:経済産業省の許可事業者数)に事業者アンケート調査で得られた平均年間売上高(それぞれ1億5000万円、8億80万円)をかけ合わせたもの」となっている。

 しかし、これは葬儀施行に係る全事業者を対象としたものではないので、この市場規模は明らかに実態を下回っている。
 計算としては、日本消費者協会調査(07年)における平均単価(「葬儀一式費用」)142・3万円に07年の人口動態の死亡者数の年間推計110万8334人をかけた数字であると1兆5653億円という数字になる(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」の08年11月時における1件あたりの売上高は150万円となっている。但し、そこには葬儀施行に含まれない仏壇等の売上も含む)。
 生活保護世帯(葬祭扶助は約10万件)や直葬その他を考慮し、この8割とすると1兆2522億円となる。おそらく1兆1000億円~1兆4000億円あたりが、おおよその市場規模と推定される。

■葬祭事業者数は約4500?
 06年総務省発表の「事業所・企業統計調査」によれば、葬儀業は事業所数7474、従業員数7万2572である。その他、冠婚葬祭互助会が事業所数885、従業員数1万4265である。これは事業所数であって企業数ではない。
 
 冠婚葬祭互助会の葬儀施行企業は葬儀業に入っているが、独立していないものは冠婚葬祭互助会の一部を形成している。冠婚葬祭互助会には互助会営業部門、結婚式部門も含まれる。また主たる事業が生花店、ギフト店で葬儀施行も扱っているところは「葬儀業」には含まれていない。JAも葬儀施行部門が別会社になっているところは「葬儀業」に含まれるが、独立していない場合等は含まれていない。
つまり、葬祭業に係っている企業、事業所、従業員の総数はデータとしてどこにもない。推定するに、企業数は約4500~5000程度、従業員総数は9万人程度であろう。
 ちなみに06年「事業所・企業統計調査」(総務省)では葬儀業の企業数は3494、冠婚葬祭互助会は179となっている。

■葬祭業の従事者9万人?但し、正社員・正職員は5割未満
 06年「事業所・企業統計調査」(総務省)によれば、葬儀業の従業員総数は7万2572人。男性4万897人、女性3万1675人である。
 但し常用雇用者数は5万6500人、うち正社員・正職員は3万6090人に過ぎない。正社員・正職員率は従業員総数の49・7%である。
 葬祭業が式場設営業から請負業、サービス業へと変化することにより、1件の葬儀にかかる人数は増加している。だが、正社員・正職員数はそれに応じて増加していない。増加しているのは非正規従業者である。これは日本の他の産業の動向と一致している。

広告
葬祭業とは何か?に戻る