戦後の葬送の変化の概略―その2

メモの続き ≪個人化する葬送≫ 85年以降、ターミナルケアの問題が顕在化します。延命治療中心への問題提起で、これは現在ではインフォームドコンセントが当然視されるまでになりました。  90年代に入って大きな変化はバブル景気が破綻し、墓需要が急速に低下し、不況になったことです。  戦後世代が葬送の中心位置を占め、旧来の慣習がとおりにくくなったこと、高齢者が「迷惑をかけたくない」意識が一般化したことです。 この背景にはより核家族化が進展し、高齢者の夫婦だけ世帯、単独世帯の増加があります。 &... 続きを読む

戦後の葬送の変化の概略―その1

今の葬儀の変化について聞かれることが多い。若い記者がきても、50代未満はバブル崩壊後の人たちである。「高度経済成長期」といってもすでに歴史の話である。今、個人化が進んでいる葬儀を当たり前として育った世代が中心になっている。以下は問われて急いで書いたメモである。2回に分けて掲載する。 葬送について、今は戦後第2の変革期の途上にあります。 墓については80年代末来の、葬儀については95年来の大きな変革期にあります。これは高齢者の世代交代、高齢化、家族解体、ターミナルケアとかさまざまな社会変化に照応していま... 続きを読む

家墓(イエハカ)の誕生史など

「墓(ハカ)」の問題が動き出したのは80年代の末。戦後、旧民法に替わり新民法になり、「家(イエ)」制度が消えたのに、墓は家制度の残滓である慣習を引きづったままであった。90年代には「うちは子どもが娘だけだから墓の跡継ぎがいない」と真面目に言っている人が多いのには驚き、呆れた。しかし墓園業者、寺院の中にも真面目に言うのがいたのには腹が立った。 しかし、日本人の墓は高度経済成長期以降、実は既に大きく変質していた。大都市近郊に民営墓地が増加したのは都市化により地方から都会に移動して、都市近郊に居を定めた核家族世... 続きを読む

学者は手を抜くな 松尾剛次『葬式仏教の誕生』

きょうは雨あまり得意ではない。 日本中世史が専門で注目していた松尾剛次さん(山形大学教授)が本を出した。『葬式仏教の誕生 中世の仏教革命』(平凡社新書)というタイトルだから買うじゃないですか。しかし、この本は、学者はよほど調べなければ専門外のことを書くべきではない、という見本みたいな本である。 「現代」という問題意識、昨年ブームになり今や急激に廃れた島田裕巳さんの『葬式は、要らない』に対抗したつもりだろうか。島田さんの本が売れたのは時代のムードに合ったからであり、本の内容は素人丸出しの程度の低いものであっ... 続きを読む