墓じまい(ハカジマイ)のことなど

今年は季節がはっきりしている。
冬から春、春から夏、夏から秋、今は秋真っ只中にある。
昨夜から寝間着にしているTシャツを半袖から長袖に変えた。
昼間と夜間の温度差が激しい。

今「ハカジマイ」ということが結構話題になっている。
週刊誌的にはいい話題なのだろう。

少し前までは地方にある墓を住所地、例えば東京に墓を移す、「お墓の引越し」つまり「改葬」が話題になっていた。
遠隔地に墓があったのでは墓参が大変、という理由であった。

今はもう少し進んで、継承者の必要な墓は地方でも東京でも維持がたいへんなので、家族の墓を整理して、継承者を必要としない「永代供養墓」(合葬墓)等に移すことを言うようである。

少子化、生涯未婚率の上昇もあり、墓が家族で維持していけないというので行われるものである。
何やら「ダンシャリ」に似ている。

残る家族がいない、いても彼らに負担をかけたくない、という心情から出ているものであろう。
主として40代以上~高齢者までの、どちらかというと女性が動かしている。
80年代末からの「墓」を問う動きも女性がどちらかといえばイニシャティブをとって動かしてきた。
家族の変化に敏感に反応するのは女性なのかもしれない。
別に言えば男性は鈍感なのかもしれない。

しかしブームに乗じてビジネスチャンスにしようという輩もいる。
これには男性が多いように思うのは偏見か。

流行る「改葬」「墓ジマイ」であるが、もっと桁違いに多いのは地方の墓地の無縁化あるいは放ったらかしである。
こちらは意図せずしているのか、存在を忘れたのか、係累が途絶えたのか、意図的に放ったらかしなのかはわからない。

「お墓の引越し」も「墓じまい」も、法律的には2つとも「改葬」であり、改葬する元の墓所の原状復帰が義務とされる。
工事費は、最も典型的な1坪(今の東京では大きな墓所にあたる)では1平方メートル10万円程度と言われるので約30万円程度となるようだ。

墓地のある寺へのお礼は別にしてである。
(タマシイヌキ、等言われる)
お寺へのお礼はそもそも各自が各自の想いで行うことで、一般論を言うのもばかばかしいので触れない。

かつて「改葬費用約300万円」と言われたのは、20年ほど前には新しく墓を建てるのは250万円程度(今はもっと安い)と言われたので、原状復帰の工事費プラス新墓代として計算されたからである。

「新墓代」は新しい墓地をどこに定めるかによって大きく違うのはあたりまえ。
これは地方の一戸建てを廃して都会の一戸建てに立て替えるイメージ。
「墓ジマイ」にはそもそも新しく一戸建て墓を造るイメージはないだろう。

今新しく動いているのが「送骨」と言われるもの。
どこかの(どこでもいいのだろう、墓参をしない前提なのだから)永代供養墓、合葬墓で使用権を3~5万円程度で買い、そこに遺骨を持参するのではなく、宅急便等で送りつけるというもの。
これは法律的には「埋蔵」の一形態であるが、ほぼ「遺骨処分」である。
こうしたことを選択する必要性がある人もいるだろうから、一般論としては是非を問わない。

もっともこうした措置を行う人は少ないが、最近ではチョクチョク話題になる。

当然この間には業者が介在する。主としてネットが仲をもつ。
大手スーパーもこんな事業に手を出している。

引き受ける墓地の方の名前は名乗っているところもあるが、名乗っていないところが多い。
通常の墓地では売れなくなったので永代供養墓でも造れば売れるかな?と思って造ったが、ポリシーも特徴もないので売れ残った墓地が、骨壺単位ではスペースも取るし、後から改葬なんて言われるのは面倒だからと、「合葬なら」という条件で引き受け、日銭を稼ごうとするのもあるようだ。

もちろん必要性を痛感してポリシーをもってやっている寺院もある。
が、多くはそうではない。

地方寺院は都市の寺院と異なり、このところ過疎化も進み、財政基盤が弱くなっているところも多い。
いいか悪いかではなく、引き受けざるを得なくてやっているところもあろう。

なんかまた「ハカ」は「遺骨の処分場」になろうとしているのか。

(続く)

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/