母の初盆―個から見た死と葬送(13)

基本としてここに描いたものはフィクションである。
私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。

母の初盆

厳しい日照りのなか家族4人で菩提寺に向かう。
毎年欠かさない行事なのだが今年は母がいない。


昨年も厳しい夏であった。
でも母は元気に先頭に立って歩いた。
その母が秋の訪れと共に寝込むようになり、3カ月後に静かに逝った。
だから今年の夏は母の初盆である。


本堂には100人以上の人が集まった。
法要の後、住職が立って言った。


今年もこうして皆さんにお集まりいただき、お施餓鬼を勤めることができました。
今年初盆のお宅は
23軒です。
3月の大震災でごきょうだいを亡くされた方もおいでです。
今年は震災でお亡くなりになった方々、身元不明の方々も覚えてお勤めしました。
仏さまになられたということは、全てのいのちがつながっているということです。
仏さまのいのちのつながりを共にいただきたいと思います。


母は戦争の時の話をよくした。


たくさん人が死んだ。
妹も日本への帰還船のなかで死んだ。
栄養失調だった。
その人たちはいなくなったのではなく、私のいのちに今もつながっているのよ。


つらい想い、悲しい想いも併せて、今、私たちはいのちをいただいている。


玄関先で灯を点し送り盆をした。
たくさんの人たちが手を振って去る風景が心に浮かんだ。
母もその妹もその中にいた。

(2011年9月記)

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/