三回忌
三回忌だという。
つい2カ月ほど前の出来事のような、はたまた夢の中の出来事であったかのような…。
現実感がまるでないのだ。
心を裂かれた傷みはまだ癒えることはない。
でも、癒える必要はないのだ、と思う。
この傷みこそあなたの残り香なのだから。
この傷みがなくなったら、あなたが私の手の届かない先に行ってしまったことになるから。
どうか、私の心を傷ませ続けてください。
「時間が解決してくれる。いや時間しか解決してくれない」
と人は言う。
それは何と残酷なことだろう。
時間よ、止まってほしい。
かろうじて心の傷みがあなたの不在を意識させてくれているのだから。
子どもは、ほんとうはあなたがいないと何にもできない私だと知っているので、心配してくれている。
まるで子どもが私の庇護者であるかのようだ。
あなたが私を看取ってくれるもの、と私は勝手に心で決めていた。
だから最期の枕辺であなたに遺す言葉まで決めていた。
しかし、それを伝える機会は永遠に失われた。
そしてあなたは別れの言葉も遺さずに逝ってしまった。
私の唯一の日課は朝線香の火をつけること。
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