そこには痩せこけて、口を開け、固まるように寝ていた人がいた。
思わず引き返し、ドアの横にある名前を確認した。
間違いなかった。
そこに姉の名が書かれており、ベッドにも姉の名が書かれていた。
声をかけても反応しない。
1週間前に、間違って携帯を押し、姉につながった。
すでに5度目の入院をしていた姉だった。
力は弱かったものの受け答えはしっかりしていた。
先に姉を見舞った兄からの電話で、著しく衰弱し変貌していると聞かされてはいた。
だが、ここまで酷い変わりようとは思わなかった。
かろうじて呼吸する様が喉で確認できるが、まるで死後硬直の様に近い。
死ぬということは大変なことだ。
死の世界と生の世界とを行ったり来たりしているようだ。
朝から傍にいても、姉は何の反応も示さない。
夕方、諦めて帰ろうとして声をかけた。
目が開いた。
手が動き、声を発するが、「ア」とか「ン」とか唸るよう…
言葉にならない。
姉の目は確かに私の姿を追っているのだが。
しばらくすると、目は固く閉じられた。
姉は深い昏睡に再び入った。
これが生きている姉に会う最後の時間だろう、と思った。
ベッドの傍に立ったまま、骨と皮だけになった手、脚をさすり続けた。
2日後、姉は息をすることを止めた。
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