あのとき それから 1990年日本初の樹木葬

昨日2017年5月31日朝日新聞夕刊特集「あのとき それから 1999年(平成11年)日本初の樹木葬」(記者:帯金真弓さん)が掲載された。

Jumokuso20170531_2

 
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12965781.html

いま樹木葬は中国、韓国でも人気らしいが、起源は1999年に岩手県一関市の祥雲寺(当時:現在は知勝院)が山ごと「樹木葬墓地」として許可を得て開設したのが最初。
自然保護活動と葬送を一体化した提案であった。
http://www.jumokuso.or.jp/description/index.html

これは2005年の「都市型樹木葬」をうたったエンディングセンター「桜葬」の提案につながる。
http://www.endingcenter.com/jumoku/

元来「樹木葬」は90年前後の新潟妙光寺の永代供養墓「安穏廟」に代表される継承を必要としない、誰にも開かれた墓「永代供養墓」の動き、
http://www.myoukouji.or.jp/annon/index.html
1991年の葬送の自由をすすめる会の「自然葬」(散骨)
http://www.shizensou-japan.org/
における自然志向を背景として生まれたものである。

桜葬の出現で墓地内エリアで容易に実施できると理解した横浜市や東京都が「人気がありより安く大量に遺骨を埋蔵できる墓地」として注目。
理念よりも「樹木を墓標とした墓地」くらいの安易な取り組みが全国に広がっている。

自然保護を真剣に考えたものでは千葉県袖ケ浦市の真光寺の里山墓地がある。
https://shinko-ji.jp/jumokuso/

現在「樹木葬」と称するものは多数あるが、理念があるものはそれほど多くなく、便乗型が少なくない。
90年前後に永代供養墓ブームが生じ、墓不況が本格化すると、理念なく追随し永代供養墓が全国に増えたが、「死後の安心を託す」のであるから便乗型の多くが失敗したという過去がある。

なお帯金記者のまとめた私のコメントは以下のとおり。

■「墓の形態=弔う心」ではない 葬送ジャーナリスト・碑文谷創(ひもんやはじめ)さん(71)

そもそも「家墓」は古来の概念ではありません。明治政府の民法による「家」意識の高まりと伝染病対策の火葬推進で、庶民に広がるのは明治末期から昭和の初め。複数人が同じ墓に入る前提となる火葬率が6割を超えたのは1960年以降。家の墓を守るのが「伝統」と語られるが、そんなことはない。

戦後は家制度が廃止されたのに墓制度は戦前のまま。経済成長と共に地方から都市への人口移動が進み、新興都市住民が周辺で墓を買った。70年代は空前の霊園開発ブームで、バブル崩壊までは数百万円もする墓が飛ぶように売れた。社会が変化しているのに、寺を中心とした業界は檀家(だんか)制度や長子継承に縛られたままで、80年代に継承性の問題が表面化したのです。

伝統はないから、崩れるのも早い。今は骨を郵送して納骨を任せる「送骨」サービスも登場し、合葬なら3万円程度で利用できる所も。火葬場から遺骨を引き取らない例も出てきています。

弔いの形態はこの30年で多様化しています。かつて墓の大きさで信心深さを語ることもあったが、今は永代供養墓でも熱心に墓参する人もいれば、立派な家墓でも放置する人もいて、放棄墓の問題は深刻です。その外形から、弔う心を測ることができなくなってきているのです。

コメントがまとめられるというのは難しいことだが、ここは帯金記者の苦労を考え、そのまま掲載しておく。

墓の略歴について書いておこう。

墓地は古来よりある。
民衆が墓をもったのは戦国時代以降
江戸時代までは個人単位の墓
明治末にコレラ流行を機に政府が火葬を推進、明治民法が「家」を単位にしたため以降「家墓」が人気に。
•1960年火葬率6割を超える(現在ほぼ100%)
1970年代より都市化の影響で大都市部に墓地需要増加。墓石のブランド化、墓石に家紋入れが流行
1991年バブル崩壊で墓地需要急低下。少子高齢化多死社会が問題に。
2011年経産省調査。墓新規3割。うち3分の1が永代供養墓、散骨、樹木葬等の新形態を選択。

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/