日比谷カレッジの感想、構成、補足-民衆にとっての「墓」の変遷

2月26日に実施した日比谷カレッジでの講演
「民衆にとっての『墓』の変遷―葬送の原点を探る」
のアンケート結果を教えてもらった。

当日の来場者数は161名
予想外に多かった。
「他の日比谷カレッジに参加して」「館内ポスター、チラシ」で参加された方が40%近くと日比谷カレッジ固定客の方があったのでこうした多数になったようだ。

出席者の年代

 

 

 

 

 

 

 

アンケート回答数は5割を超えた。ありがたいことだ。

気になる感想は、
1.大変満足 52.9%
2.満足   35.3%
3.普通    8.2%
4.やや不満  2.4%
5.不満    1.2%

年寄りに極めて優しい聴衆の方々であった。

「今回の講座で日本における古代から現代まで至る『葬送』の様子の変遷について詳細なレジュメと丁寧な解説によって詳しく知ることが出来て大変有益で勉強になりました。」
「時代と共に変遷していった「墓」のことがとても良く分かり嬉しかった。現代の墓が昔からだと思っていたら現代のことって時代的にみると最近のことなんだなあと思った。実は、そうするほうがあまりこだわりを持って生きる事もないのかなと思った。」

という好意的なご意見もいただいたが、私の時間配分の悪さもあって、それを指摘するご意見もいただいた。

「長い歴史、古い時代から現代までのことを1時間半で話して頂くのは無理があると思います。時間をたっぷりとっていただき最後に質疑応答の時間も作って欲しかった。」
「1回では内容が薄くなる。数回に分けて欲しかった。テーマとしては興味深いのでやり方を考えて欲しい。」
「1時間30分では全く足りない内容。何回かに分けてやる方法もあろう。初めて参加したが意義があった。興味ある講座があればまた参加したい。題目が広すぎ。もう少し焦点を絞っても良いと思います。」
「内容の時間配分についてもう少し配慮が必要だったと感じています。」
「多数の参加者は、中高年の男女、親の墓を持つ若夫婦が多かった。参加者は、墓の歴史を聴きたかったのではない。墓の今を知りたかったのだ。日本の歴史の話はほとんどの人は知っている。*資料の最後の頁の話をもっと詳しくして欲しかった。最後の10分を30分にして欲しかった。」

上記最後でも指摘があったが、資料としては配らずに当日追加した2枚のスライドについて指摘があった。
実はこれについては当日に最後のコメントとして話す予定でいたが、やはり見せようとして直前になって追加したものであった。
「前半の歴史部分は興味深く聴きました。最後の2枚のスライドが実質的に参考になりました。(スライドのプリントになかったもの)」
「最後に挨拶した2枚のスライドコピーがあれば良かった。」

これを末尾で公開する。

当日の展開は以下のように進んだ。

1.民衆にとっての墓の変遷

2.さまざまな墓

3.主旨
・「墓」という言葉で想起するエジプトのピラミッドにしても、日本の古墳にしても、それは支配者の墓であって民衆の「墓」ではありません。
・名もない民衆個々にとって、死者とはどういう存在だったのでしょうか?「ハカ」とはどのようなものだったのでしょうか?
・先進国共通現象ですが、日本は少子高齢社会のトップを走り、個人化しています。実態を見ずに「日本の葬送は古来より不変の慣習」という神話がはびこってきました。だが、その「葬送」は今大変動期にあります。これを考える必要な視座を探ります。

4.「死者を埋葬する唯一の動物」
―フィリップ・アリエス(フランスの歴史学者1914~84)

5.シャニダール遺跡
―北イラクの5~3万年前のネアンデルタール人の洞窟遺跡。1960年頃発見

6.はさみ山遺跡(大阪府藤井寺市)

7.甕棺、箱式石棺箱等多様な埋葬―前2000年頃縄文時代

8.前900年頃弥生時代前期

9.屈葬―吉母浜遺跡(山口県下関市)

10.金隈遺跡(福岡県福岡市)

11.吉野ヶ里遺跡(佐賀県)の甕棺

12.古墳―大仙陵古墳、古墳の分布

13.古墳―概説

14.薄葬令

15.民衆の遺体処理の実態

16.土葬/風葬(遺棄葬)

17.火葬の開始 考古学上、記録上

【以下、中世】
18.死穢意識、感染症、災害

19.貴族・武士の墓と民衆の墓

20.鎌倉時代の武士、僧、貴族の墓

【以下、近世】
21.戦国時代 
―近世の村と仏教の民衆化、民衆の墓

22.「江戸時代は墓石時代」
―関根達人『墓石が語る江戸時代』

23.江戸中期に起こったこと
―寺請制度、宗門改めの制度化

【以下、近代】
24.明治維新

25.古い墓と現在の墓―大きさ比較

26.火葬の推進と家墓の流行

27.家墓

28.墓の略歴
•墓は古来よりある。
•民衆が個別の墓をもったのは室町後期(戦国時代)以降。
•江戸時代までは個人単位の墓が多い(複数墓も存在)。
•明治末にコレラ流行を機に政府が火葬を推進、明治民法が「家」を単位にしたため以降「家墓」が人気に。
•1960年火葬率6割を超える(現在ほぼ100%)。
•1970年代より都市化の影響で大都市周辺で墓地開発が急増。自然破壊が問題に。墓石のブランド化、墓石に家紋入れが流行。
•1980年代後期継承者なし=無縁墓システムが問題化、永代供養墓の登場。
•1991年バブル景気崩壊で墓地需要急低下。少子高齢化多死社会が問題に。1991年散骨、1999年樹木葬。
•2011年経産省調査。墓新規3割。うち3分の1が永代供養墓、散骨、樹木葬等の承継者の有無を問わない新形態を選択している実態が明らかに。

【以下、現代】
29.墓のいろいろ

30.法律上の「はか」とは?

31.祖先祭祀か死者祭祀か?

32.永代供養墓(合葬墓)

33.散骨(自然葬、海洋葬)

34.樹木葬

【以下、当日表示分】
35.人間の死と埋葬

36.死者を受けとめ、覚えること

 

広告

投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/