地震と再び「死生学」?

私が生まれたのは岩手県の一関です。
今度の岩手・宮城内陸地震の震源地とされたところです。
テレビの映像では山が大きく抉られ、その凄まじさがうかがえます。
今度の震災、山間の地でしたから人的被害は少なかった、といっても被害に遭った方にとっては何が何だかわからなかったでしょう。
阪神・淡路大震災の4倍ほどの規模とか。
被害は隣接する宮城県の栗原市のほうが大きかったようです。

一関の友人に電話したところ、街部は震度5で、「眩暈がした」と言ってましたが、大きな被害はなかったようです。
震源地近くに樹木葬墓地がありますが、住職の千坂さんによれば「岩盤のしっかりした場所」なので、そちらには被害がなかったようです。

今度も磐井川(北上に最終的には流れ込んでいる)の上流がせき止められたところもあったようで、危険が続いているようです。
一関は戦後2度台風で磐井川が氾濫して多数の死者を出しています。
私は生まれてはいたものの、記憶という形ではありません。但し1階の壁の上の方にラインが入っていて、そこまで浸水したという話を聞きました。記憶かな、と思うところもあるのですが、大人の話を自分の経験というように勘違いしているところもあるようです。
記録によれば昭和22年にアイオン台風で死者・行方不明が101名、昭和23年のキャサリン台風で死者・行方不明が473名という大惨事でした。私は当時1歳と2歳のとき、記憶にないというのが本当でしょう。
当時は台風にアメリカの女性の名がついていました。

まだまだ危険な状態は継続されており、発見されていない方もいます。お見舞い申し上げます。

栗駒山の山麓が震源地。栗駒山と地図には表現されていますが、一関では「須川岳」と呼んでいました。小学、中学の校歌にも須川岳が登場したように思います。一関にとっての須川岳は関東における富士山、津軽における岩木山のような存在と言ったら、気分がわかっていただけるでしょうか。山頂が秋田県、宮城県、岩手県の3県の境界になっています。

さてこの間「死生学」という名称に異議を唱えましたが、拠点リーダーを務める東大の島薗教授は確信犯のようで、欧米のデススタディやサナトロジーに対して「新しい学問」と言っているようです。

「西洋で『死学』(Dearth Studies, Thanatology)とよばれてきたものを、『死生学』(Death and Life Studies)とよんでその地平を示唆している」http://www.l.u-tokyo.ac.jp/shiseigaku/ja/gaiyou.htm

と語るのです。
でも、何か違うように思えるのです。
従来のサナトロジーと生命倫理を一緒にした感じなのでしょうが、私は腑に落ちません。

あえて「死学」と言うと、きれいごとではないのです。変に一般化するものでもないのです。個別の関係性の中におかれた死を問題にするのです。
「生と死を一体で」と言うときれいに見えますが、近代において「死」がどう見られていたのか、というアンチテーゼとして、あえて「いのち」一般ではなく「死」にこだわるのです。

言葉に対する感性の違いもあるでしょう。
デーケン先生が言っていたときはいいのですが、東大という権威の服を着て、各大学でも「死生学講座」なんかができてくると、「何か違うぞ」とひねくれた私は思うのです。

私は学者でもなんでもないのですが、この違和感を抱えていくことでしょう。

さて、ホームページを更新しました。
http://www.sogi.co.jp/

今回より青木新門さんの「新門随想」
http://www.sogi.co.jp/sub/sinmon/aoki01.htm
鷹見由紀子さんの「グリーフサポート研究会」
http://www.sogi.co.jp/sub/kenkyu/grisup1.htm
を掲載します。
新門さんの『納棺夫日記』を本木雅弘さんが読んで感銘したことがきっかけでできた映画「おくりびと」が9月13日より全国で上映されます。
http://www.okuribito.jp/
同名のマンガも連載中のようです。
鷹見さんとお逢いしたのは高野山でのセミナーでした。
新門さんとは、いまはない新宿西口の呑み屋「火の子」でしたっけ。
私の書いたもの以外を掲載するのは初めてです。
是非お読みください。

私は「難民化する高齢者とその死」をアップしました。
http://www.sogi.co.jp/sub/zuiso/ska5.htm

なお、こちらの連載も続いています。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/manabi/ceremony/index.html

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/