仕事納め

きょうは12月29日(月)、わが事務所はきょうが仕事納め。
早いところは26日で終わっている。
だが葬儀社には仕事納めがない。
火葬場は短いところで1月1日~1月3日だけが休み。
その間は火葬ができないだけに葬儀社の負担が大きい。
冬は死亡する人が多い。年末年始だからといって休むわけにはいかない。
1月4日から火葬場が開くと葬儀ラッシュとなる。

かつては松の内は1月14日までと言われ、その後7日までを言って、松の内は葬儀を行わないでいた。
といっても遺体の保全が困難なので、火葬だけは近親者で密葬にて行い、15日過ぎてから皆さんに案内して本葬をした。
それが8日以降になり、いまでは4日以降になっている。
三が日だけが葬儀を行わず、これも火葬場が休みだから行わない理由となっている。

年賀欠礼の葉書を出さなかった先から年賀状を受け取ったとき、喪中にある人は松が取れてから、つまり15日を過ぎて「寒中見舞」の葉書を出すのが慣例。

さて、クリスマスや正月についての「感想」らしきものを書いてみる。かなり大雑把だが。

きょう29日は、一般の会社の場合は休みが多いが、葬儀関係の会社ではいつもと変わらない。だからいつもと同じように電話してくる。
今朝用事があり、ある葬儀社を訪ねたが、いつもの日がそこにはあった。

近年は11月になるとクリスマス騒ぎが始まり、12月25日をもって終わり、途端に正月に向けて、すばやく転換する。
キリスト教ではクリスマスの4つ前の日曜日から待降節と言い、クリスマスの備えをするから、これがクリスマスの1ヶ月前からクリスマス商戦に入る根拠と言えないことはない。

クリスマスはキリストの誕生を祝って行われるが、キリストというのはイエスの尊称である。「イエス・キリスト」という名の人間がいたわけではなく「イエス・キリスト」というのは「イエスはメシア(救世主)である」と信仰告白した表現である。
仏教の「釈迦」に対応するのはキリスト教では「キリスト」ではなく「イエス」であるはずなのだが。
また、イエスが12月25日に誕生したということはどこにも根拠付けられていない。ミトラ教の冬至と関係づけられたらしい。
つまりキリスト教が進出するに合わせ、その地の祭をキリスト教的に意味づけをしたらしい。

日本でクリスマス商戦が始まったのは明治30年代というから結構古い。
日本では「メリー・クリスマス」と祝うが、キリスト教国アメリカでは90年代以降、他宗教の人を配慮して「ハッピー・ホリデイズ」と言う人が出てきたようだ。12月24日から1月1日までが休暇(ホリデイ)になることが多いという事情も背景にある。

正月と盆とは共通項が少なくない。一方で正月棚があれば、他方では盆棚がある。
先祖祭という点では共通する。
盆は三十三回忌で弔い上げを済ませるまでの死者の霊と交歓する祭であり、三十三回忌を済ませ先祖の霊に合祀された後の、個性を失った神様の祭が正月と、いまの日本では分業されている。
具体的には、三十三回忌が済むと死者個人ごとの位牌は寺に納められ(最近はダイオキシン問題とかで、お焚き上げが難しいので受け取らない寺もあるが)「先祖の霊」という位牌に合祀される。三十三回忌または五十回忌で個々の死者の弔いは終了する。

私は以前から「三十三回忌、五十回忌の弔い上げは、死者を知っている世代がいなくなり世代交代が行われる期間にほぼ一致する」と言っている。

日本の民俗は明治維新前までは神仏混淆の世界で、仏教と神道がうまく棲みあっていたようだ。最近これを懐かしむ声が宗教者の間から聞くようになった。そして言う言葉は、
「日本人は他の宗教に寛容」
である。
主にイスラームやキリスト教徒の他宗教への排撃性を批判しての言葉である。

仏教関係者、神道関係者が近づく理由に今の環境ブームがある。
キリスト教の人間中心主義はおかしいということで、両者は一致するというのだ。

ま、あまり宗教を手前味噌に利用することは、「ブッシュのキリスト教」を持ち出すまでもなく、不健全である。

よく臓器移植の問題で、キリスト教は、仏教はどう考えるか?
と問われることがあるが、こんな現代的問題に古典宗教が答をもっているわけがない。
宗教団体が答を出す問題ではなく、個人が答を出すべきだろう。その個人の答がその信仰に深く根差したものであるにせよ、あくまで個人の答なのだ。
私は宗教者が臓器移植のような問題を考えなくてよいというのではなく、宗教の名の下に答えることは結構危ういことだと思っている。

大東亜戦争と言われた先の大戦で、日本の宗教団体は、宗教の名の下に戦争に加担した。政府や軍部の圧力に負けたと言うが、事実は、いやいやながらも多少あったろうが、多くは積極的に加担したのである。加担を拒否した少数の仏教徒、キリスト教徒は、教団自体から否定され、排除された。

さて、2008年も残りわずかである。
私の予定は特にない。というより原稿を書かないといけない。
だから、ふだんの日のように事務所に出る予定。

よいお年を!

広告

投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/