地盤変化が起きている

95年以降の葬儀の個人化傾向はますます進んでいます。
00年以降の自宅安置習慣が消失
文字通り、死亡も葬式も生活離れが進みました。
05年以降の直葬の流行

と来て、最近では「うちは下町だから、地域があるから家族葬や直葬は関係ない」とおっしゃっていた葬儀社の方々が、青くなって
「もう無茶苦茶だ。ガタガタだ」
と悲鳴をあげています。

山の手は流行も早いですが、それぞれで、「多様化」に向かいます。
それに対し地域のつながりの強いところは、初めはゆっくりで、従来の風習を変えようとしません。しかし、
変わると早いです。
「Aさんもやった、Bさんもやった」となると勢いがつきます。
顔の見える間柄というのは、変化に最初はガードしますが、いったんどこかが始めると、決壊も早いです。

きょうも取材に来られた記者さんと話していましたが、終末期の問題と葬儀の問題は地続きです。

介護の問題が破綻し、病院は療養病床を解消する方向、老健等の介護施設はそれほど伸びない。自宅の介護力はいくら介護サービスがあっても弱くなる一方。

行政まで「尊厳ある死」を言うようになったのは、患者の人権、自由意思の尊重を守るということではなく、「本人の自由意思」という名分での高齢者の死の促進です。
高齢者が捨てられたら、死者も捨てられるのは当然のこと。
きれいごとのバックに本音が透けて見えます。

悲観的な話だけでなく言うと、ターミナルケアとグリーフケアが結びつきつつあることです。

ターミナルケアでは本人の人権、クオリティ・オブ・ライフだけでなく、看護する家族のケアが、まだほとんど実態はないものの考えられるようになりました。
本人の死後に仕事に都合をつけて葬儀に駆けつけてくれる看護師さんが増えてきています。
死後のことには良心的な医師すら関心をあまりもちませんが、看護師さんたちの中にはケアを全体的に考えようとする姿勢の方が少なくありません。

ターミナルケアで身体的苦痛、心理的苦痛、社会的苦痛、プラスしてスピリチュアルな苦痛があることが指摘されていますが、グリーフケアにもスピリチュアルケアが問われるのでしょうか。
言うことはできても、じゃ何すりゃいいんだ?
となるでしょう。

愚痴を言える、不安について零せる、小さなことでも一緒に笑える、一緒に怒れる、だらしない姿を見せられる、ときには喧嘩ができる、ときにはつまらない自慢もできる、弱さも勝気も安心して曝け出せる、そんな友人の存在がいちばん大切なのかな、と思うのです。
でもなかなかいないのも事実です。

私自身、ひたすら逃げまくっているので、あんまり他人のことをかえりみる余裕はないですが、そんな都合のいい仲間がいればいいなと思っています。
仲間と思われた人には不幸でしょうが。

最近はできるだけプリミティブに考えようと思っています。

「心理的苦痛」と「スピリチュアルな苦痛」の違いは?
なんて言うのは説明のための説明でまったく意味のないことです。
苦痛に色なんてついていません。

言えるのは、不眠症には導眠剤を、というのが最も適切な対処です。
それでどれだけ私は助かっていることか。

僧侶の皆さん「直葬」は「ジキソウ」ではなく「チョクソウ」と読んでいただければうれしいです。強制はしませんが。

あと、やはり私はdeath and life study(死生学)とは言いたくありません。
好みかもしれませんがdeath study(死学)にこだわりたいと思います。
死はそれだけで充分に極めて人間的な事柄です。「生」という言葉がはいりゃいいというものではありません。言葉を飾るようでいやなのです。

支離滅裂をお赦しください。

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

「地盤変化が起きている」への3件のフィードバック

  1. ごぶさたしてます。寒さがじわじわと迫ってくるこのごろですが・・。仕事が忙しいわけではナイのですが、なにかしらおちつかなくて、あれをやり、これをやり、しばしぼーっとして・・・。こんなことのくりかえしでいつのまにかもうすぐ霜月。実家のある島根では神様の会議が終わって宴会まっさかりか・・?
    月刊誌もブログも・・なにやら迫るものを感じてやみません。でも、おっしゃるようになんとかしなくては・・と自らをふるいたたせて取り組んでいらっしゃるかたもふえてきているように思います。お寺さんも、看護しサンも、業者さんも!でも、この前TVで・・心使いまで映像にしちゃった業者さんの特集みてしまいましたけど・・後味悪かったです。
    私たちは、すっきりとがんばります。こう御期待!!
    お体ご自愛くださいませ。

  2. 初めまして。
    昨日葬儀社の現場の友人と今後の葬儀について・・を話しました。20年来の友人のお母様の葬儀をその葬儀社に頼んだ事がきっかけでしたが、菩提寺の住職に幻滅した家族の様子がお気の毒で仕方ない葬儀でした。
    友人はお寺様の機嫌を損ねない様に全神経を使ったと言っていました。
    直葬が増える原因の一つが、そこにある気がしたのです。
    葬儀の仕事に就いて15年程、葬儀社から独立そして現場から一線を引く仕事(それでも葬儀関係ですが)に・・・と私自身も色々な角度から葬儀を見て来ましたが、この先自分に出来る事は何かと自問自答の日々です。
    葬儀現場の友人が直葬を楽観的に語っていた事が少しショックだったのですが、自分の収入よりもお客様の事を考えられる数少ない葬儀社なので、あえてそう深刻に考えないようしているのかもと、思う事にしました。
    非力な私に出来ること・・・を探しています。

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