消費者目線?

12月になりましたね。
でもまだ秋の感じが…。
今年は季節感覚がどうも狂ってしまっています。

さてさて葬祭業関係にも「ビジネス」という感覚で参入される方、関心を示される方が急激に増加しています。

しかもかなり安直に。

これは既存の業者の中にもこうした感覚の方が増えています。
内外ともに増加しているように思われます。

この方々からは業態が古い、旧弊な面が目につくのでしょう。
でも業態は古くあっても尊敬すべき人がいて、その人たちの想いをつかみ損なったら、ダメですね。

死者、遺族の支援をするということがどういう意味をもつのか、頭ではなく理解してほしいな、と思います。

きれいな洒落た表現で語ればいい、とは思っていないのでしょうが、何かそうでしかない軽い感覚が見てとれるのは、私が古いからでしょうか。
ま、年寄りですから、そう言われてもいいですが。

よく「消費者目線」と言いますが、葬儀は「買い物」だけではないので、「普通の人が家族と死別したとき」と考えると、その人は家庭、地域、社会の中にあり、死者とも固有の関係をもっているわけで、それが「死」がどこまでも固有性をもつ理由で、それを少しでも理解しようとせずコンビニの商品を売る感覚で考えると、もの凄く違和感があるのですね。
消費者契約法を大切にする、というのは外せませんが。
(あ、この「目線」というのは最近急激に一般化した日本語とか。)

葬祭業者の提供するサービスの価格体系はあまりにバラバラで考え方を統一していく必要があります。
しかし、まだ「祭壇料」なんて言っているようでは、葬祭サービスの何たるかを理解していないわけで、そんな人が「近代化」「消費者目線」なんて言うと、そんなレベルでよく参入を考えるな、そんなレベルに参入を許す業界も問題あるのでは、とつい嘆いてしまうのです。

この世界、金がある奴が強い、となるのは嘆かわしいことです。
寺院も大伽藍をつくればいい寺院なわけはないわけで。

私は負け戦を重ねてきたので敗者をひいきしがちです。それは私の特徴の一つでもあるのです。

気になるのは、皆さん「情報提供」とばかりに「葬儀」や「墓」の知識をHP上で展開していますが、間違いが少なくないことです。
古い葬儀社の方も素人の広告会社や編集プロダクションに外注してチェックもしていないところが結構あります。

せっかく「情報提供」されるなら、少なくとも間違った知識は提供しないよう、責任をもってチェックすべきです。
いくらたいそうなことをおっしゃっていても、こうした基本を大切にしないところは信用しません。

また根拠のない知ったかぶりもいやですね。
「四十九日までには納骨を」とか「密葬は後に本葬がある場合の用語」とか「家族だけでやるのが家族葬で親戚が入るなら親族葬」とか…。
こういう説法がときには遺族への暴力にもなるのですから、「葬儀アドバイザー」「葬儀コンサルタント」とか名乗る方はご注意ください。

あるところのHPでは「お布施」について、僧侶に対してだけではなく、キリスト教会の牧師に対するものまで含めていました。
(知らない人には同じように見えるんだ、と教えられましたが)

過去にある仏教寺院が「お経料」「戒名料」と表示していたので私がメールを送って批判したら、修正結果が「お布施料」でした。
これは仏教寺院がやったもの。呆れた話です。

葬儀の習俗には結構「男尊女卑」がまだ残っています。大新聞社が葬儀本を出したときに、男尊女卑の感覚が残る習俗を「マナー」として記述していたのにはびっくり。
「売れる」という理由で、悪習もそのまま、見直しがないまま出して平気でいる、というのはどうかしています。

最近の新規参入組(企業だったり人であったり)は基本を少なくとも「学ぶ」という姿勢がほしいですね。

葬儀社も僧侶も、特に関東の方々、出棺前の初七日みたいな理屈にも遺族の感情にも無縁なことはやめましょうや。やらないほうがましです。
形式を残すだけでも、なんて言う僧侶の方もいらっしゃいますが、そんなのは形骸化以外の何ものでもありません。
もうすでに進行のマニュアルにした大きな葬祭業者もあるとか。
何を考えているやら。
こんなばかげた説明不可能なことをやっていて「儀礼は大切」と言っても説得力はありません。
自分たちで壊しておいて何を言っているんだ、と私はずーっと怒りっぱなしです。

きょうはふと新規参入組のHPを見て、かっとして電話をしてしまいました。
そのうち1社からは後からお電話いただきましたから、まだいいですが。
ま、それを見て血圧が上がって書いたのがきょうのブログ、というお粗末でした。

私も知らないところでミスをしているかもしれません。その時は是非ご教示賜りたく、伏してお願い申し上げます。

ほんとうは先日の朝日新聞夕刊が一面で報じた「ポックリ信仰」について書こうと思っていたのですが、予定変更して鬱憤晴らしになってしまいました。すみません。

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

「消費者目線?」への1件のフィードバック

  1. >この世界、金がある奴が強い、となるのは嘆かわしいことです。寺院も大伽藍をつくればいい寺院なわけはないわけで。
    私もそのように思います!
    大変ご無沙汰しておりました。
    しばらく頭を冷やしていた次第です。
    「伝統」も形骸化に拍車をかける装置にもなれば、やはり亡き故人に対する想いが育んだ人類の財産とも言えると思います。
    要は、そこに関わる「人」次第だな・・・と改めて感じた次第です。
    ちょっと脚下を照顧しようと考えています。
    時折、覗かせて勉強させていただきます。

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