だんだん春に向かっている感じですね。
今朝の朝日新聞は宗教法人問題の第3弾になるのでしょうか?
タイトルは「不正墓地経営、トラブル次々 墓参り妨害、追加金要求…」です。
先日、高見さんがブログで書いていました。
http://blogs.yahoo.co.jp/hukutyaduke_haru
お墓については
墳墓つまりお墓は墓地に置かれています。この墓地は勝手に作ることができません。都道府県の許可が必要で、経営主体は地方自治体、財団法人、宗教法人に限定されています。実際の許認可の事務は市区町村の保健所が行っています。
株式会社に経営が許されていないのは墓地の永続性の観点からです。でも最近では財団法人や宗教法人の倒産もあり、お墓選びには経営主体の財政が健全かというチェックも欠かせません。
と前に書いておきました。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/manabi/ceremony_070511.html
朝日さんの記事は
宗教法人などにしか認められない民営墓地の経営を営利企業が担っている問題で、購入者が巻き込まれるトラブルが相次いでいる。一部の自治体は新規開発を禁じるなど独自の対策に乗り出しているが、公営墓地が「満室」状態の東京都などは規制に消極的だ。
埼玉県本庄市の霊園(約5万6千平方メートル)は、約6千墓分の区画に200墓ほどの墓碑しか立っていない。埼玉県から経営許可を得た寺院(同市)の住職によると、前住職(故人)が県内の建築業者から霊園経営の名義貸しを持ちかけられ、300万円を受け取ったという。
ちょっと歴史的に回顧するところから始めましょう。
①室町時代後期から民衆は墓をもつようになった。
それ以前にも墓地はあったが豪族・貴族・武家を除外すると将来的には痕跡があまり残らないものであった。
②江戸時代中期に寺墓地が整備され、民衆は寺墓地あるいは地域等の共同墓地、あるいは屋敷墓が作られるようになる。
③明治維新になり神葬祭用の墓地がなく維新の元勲らを葬る墓地として青山墓地等が作られ、それが現在の都立霊園の元になる。
④戦後に「墓地、埋葬等に関する法律」ができて墓地は都道府県の知事による許可が必要となる。但し、現在すでに遺体(遺骨)が埋葬(埋蔵)されている既存墓地の引き続きの使用が認められたので、かつての共同墓地、屋敷墓地(家付き墓地)は現在でも使用されているところが多い。
⑤墓地は「永続性の確保」の観点から既存墓地のほとんどを占める宗教法人(多くは寺)のほか、信教の自由の観点から地方自治体、他の公益法人にのみ許可されている。
⑥高度経済成長に伴う地方から都市への住民の移動に伴い、大都市周辺ではいわゆる「核家族墓」需要が増大した。首都圏では公営墓地の体制ではこの需要を吸収することができないとめに他の公益法人が事業型墓地を開発することを黙認した。株式会社形態では認めず「宗教法人の保有する墓地」を認めたことにより民間株式会社が宗教法人の名で行う「名義貸し」が横行した。
これにより地方自治体が充分な墓地供給能力がある場合には地方寺院が事業型墓地を開設することが難しく、あくまで檀家用との証明が求められたり、大都市周辺で自治体が充分な墓地供給能力のない場合には開設基準が緩くなった。
⑦あまりに露骨な名義貸しが横行して消費者保護の観点からも90年代の末になると、大都市周辺でも墓地用不動産を宗教法人が実際に保持しているか、という許可規定を追加した。
⑧一般に言う「寺墓地」は結果的に2種類ある。当該寺院の檀信徒用の墓地で寺の宗教施設という位置づけをもつもので、これを「寺院境内墓地」と呼ぶ。ここは当該寺院の信徒用なので寺院の宗教宗派をもつ者にのみ許可される。これは非課税である。
もう一つは宗教法人による「事業型墓地」で、これは一般に「民間霊園」と呼ばれるものである。事業として課税対象になる。こちらは実際の運営は民間企業が行うことが一般的である。宗教法人立であっても「宗旨を問わない」のが原則で、中には創価学会員を締め出すため「仏教(既成仏教に限る)」と表現するときがある。
⑨宗教法人の寺院境内墓地か事業型墓地との境界線は事態は明確ではない。何せ買い求める(実体は使用権)者が信仰しているが故にその寺の墓地を求めるならわかるが、そんなに信仰深いわけではなく都心の格式ある墓地を求めたい人は墓地使用料に加えて「入檀料」なるものを払う。つまりは「高額な事業型墓地」と言ってもいいくらいである。ここに墓地を求めればその寺の檀家としての護持責任も発生する。
以上で墓と宗教法人の関係はわかっていただけると思う。そして1970年代以降、宗教法人と墓の問題はずーっと話題になり問題にされてきた問題である。
今は一時のような墓ブーム状態ではない。それでこの問題も取り上げられることが少なくなっている。
だから、朝日新聞が今回発見した問題ではなく、ずーっと続いてきた問題である。
墓との関係で言えば確かに「関東で最初の樹木葬」を名乗った宗教法人は「宗教法人を買った」という疑いがある。最初の一関も千葉も山口もそのほとんどは実態のある寺で寺の活動として展開している。その中にちょろっとおかしな宗教法人が紛れている。だが多くの寺院墓地で問題になっているのは新規宗教法人ではない。1970年代からの名義貸しで寺が手を出せない状況にある寺、今形式的には寺の所有地になっているが実質上の経営権はあくまで事業者にあるもの、である。
一部に「全部公営墓地にしてしまえ」という乱暴な意見があるが、お上がやればいい式の議論には反対である。死者を供養する形態は公営という選択肢も必要だろう(神葬祭用墓地がなかったから公営墓地が始まったように)が、なんでもかんでも公営に、という議論は逆に自分の信仰する寺へという選択肢も奪いかねない、本山納骨も否定する宗教圧迫になる可能性がある。
地方で公営墓地が大きく需要に応えているが土地の価格、開発価格が安く済んでいるからである。東京で都民全体の墓地需要を確保したら東京都は潰れるだろう。
何でも公営がいいのではない。火葬場は東京を除くと民間はほとんどない。
知らない人は「東京の火葬料は高い」と言うが、1体平均で約6万円というのは民営も公営も変わりがない。東京で民営は今度上がるから正式な数字を挙げないが、一般のが5万円程度で原価を下回っている。その分、個室仕立てになっている差額料金制や式場、控室の料金等でカバーしている。
地方の公営は「市民無料」「市民1万円」というのが多いがそれは自治体が穴埋めしているのである。
地方財政も厳しいのだが、私がある無料の自治体に招かれた時、「サービスをこれだけ充実するので2万円」とかできないのか、とその市長さんに提案したら「めっそうもない、そんなことしたら選挙で落ちる」と言われて有料化は実現しなかった。
社会福祉でするのだから、言うのだが東京23区でも生活保護の葬祭扶助には火葬料が入っている。そうして少しでも負担すればこれから増加する死者にかける経費でますます地方自治体の財政は悪化する。また、無料の施設というのはとかく過剰設備、過剰投資になりがちである。
こういう問題解決には住民の意識も変わる必要がある。
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