エンバーマー 現地派遣を決定 東日本大震災④

岩手県宮古市の天気予報は18日・19日は晴れの予想
でも最低気温予想は0℃、20日から天気が崩れその後は雪や最低気温0℃以下が続く、となっている。

3月の中旬なのに現地はまだ冬

遺体については、かつての神戸同様に寒いのは歓迎だが、生きている人間には厳しい。

遺体の腐敗進行を恐れ、宮城や岩手の一部では土葬を決意したという。後々の二次葬を予測してやらなければならないので慎重に、と願っている。

墓地・埋葬・火葬については、許可等は都道府県知事になっているが、事務委任が市区町村になされてもうだいぶ経過している。
今回宮城県では市区町村からの提案に対して、条件付きではあるが許可する方向である。
岩手県の一部市町村も火葬できない遺体の土葬を希望している。

従来の土葬のできる墓地であればすぐ実行できるのだが、新しい候補地を探して埋葬するとなると新しい墓地の新設許可で、今まで内規としてあった原則火葬という規定を変える必要がある。

神戸では実行までに至らなかったが、議論としては「野焼き」の可能性が論じられた。
「野焼き」とは火葬場施設以外で火葬にすること、で明治以前はかなり行われた。

遺体の処理について真剣な議論になっている背景は大きく2つある。
1つは、時間経過とともに遺体の腐敗が進み、腐敗進行に伴う遺体の損傷が進み、遺族感情としては死者の尊厳が守れない、という危機感がある。
もう一つは、大量の遺体の腐敗が進行すると、付近の公衆衛生的環境が悪化するのでは?との危惧からである。

津波での被災者が5日後に関東のエンバーミングセンターに搬送されたケースでは、損傷がさほどでなく、問題なくきれいにエンバーミングされた、というので、遺体の状態によってさまざまである。

ようやく明日19日にエンバーマーの先遣隊が岩手県入りするが、どんな仕事ができるかは現地に入って、県警との関係で決まる。
過去の事故時には処置できる遺体と処置できない遺体の差が出ることで反対があり、全ての遺体に同じような処置をすることになったという経験もある。
現地にはもうすでにさまざまな分野の葬祭関係者が現地入りしている。被災の少ない地元の他の都市の人は早くから動いている。

生きている人の救出や避難所のサポート、食料等の提供は無論大切である。
しかし家族の遺体がそこにあるのに回収できないで嘆いている人、回収されたが検案がされていない死者の家族の想いは切実であろう。また、一家もろとも死亡した家族も多いが、だからといってそれが放置されていいわけではない。
生者の都合に関係なく、どんな死者も尊いのだ。
それがわかって遺体を洗い、棺を組み立てて納棺する葬祭業者の存在は大きい。

生者援助の活動も大切であるが、死者援助の活動も大切なのだ。

昨日17日で震災発生7日が過ぎた。死者・行方不明者は1万5千人を超え、孤立状態にある人が9千人以上。自衛隊により救出された人が約2万6千人、避難所は約2千、避難者は約40万人。でも1週間経過してもわからないところがまだまだある。

他方で、福島原子力発電所の危険な状態が続いている。79年のアメリカのスリーマイル島原子力発電所以上で86年のロシアのチェルノブイリ原子力発電所事故以下と予想する人もいるが、それに至らないための作業が行われている。
作業自体が放射能汚染の危険に直面しての作業だ。

お断り
4月2~4日に浅草で開催を予定していたセミナーは、東日本大震災の状況を鑑み中止としました。

3月16日

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/