東松島市で土葬が開始

東日本大震災の被災遺体の土葬が開始された、と本日の日本経済新聞夕刊が伝えた。
http://www.nikkei.com/news/

地震や津波などで約650人が死亡、約430人が行方不明となっている宮城県東松島市で22日、犠牲者の遺体の土葬が始まった。手を取り合い、ひつぎに土をかける遺族たち。冷たい風が吹きつける山あいの墓地が悲しみに包まれた。

 同日午前10時ごろ、市が急きょ設営した墓地に、自衛隊のトラックが約20人の遺体を運び入れた。参列した遺族ら約50人は着のみ着のままで避難したためか、多くはジャケットや長靴など、普段着姿で遺体を迎えた。

 「寒いだろう」と自分が着ていたセーターを遺体に掛ける女性も。手を取り合い、スコップでひつぎに土をかけた遺族らは、涙声で別れの言葉を口にした。(略)

同市によると、墓地はリサイクルセンターの跡地で、約1千人を埋葬可能。市関係者が重機やスコップを使って穴を掘ったうえで、木材で仕切りを作り、1体ごとの空間を確保した。

 同市は21日時点で市内の高校と体育館に計約650人の遺体を安置している。市内には火葬場があるが、「遺体が多すぎて、施設では対応しきれない」として、土葬を決定。土葬した遺体は2年以内をめどに、火葬にする方針という。

写真を見ると、棺に納められ、1体ずつ並ぶように葬られている。身元がわかった人で遺族が承諾した遺体とのこと。2年以内に改めて火葬して葬られる、というから、被災地の現状としては配慮あるものとなっているようだ。

東日本大震災は本日の段階で次のように報道されている。

警察庁によると、死者は同日午後6時現在で宮城県5507人、岩手県2773人、福島県743人など12都道県で9080人。家族らから届け出のあった行方不明者は岩手県5018人、福島県4272人、宮城県4266人など6県で1万3561人となっている。

まだ全体像がわかるまでに至っていない状況でこの数字。
いつも災害時に思うのだが、数字に還元され、数字に驚く自分に嫌になる。親戚が無事と聞いて安堵する自分が嫌になる。親戚は無事だろうが、これだけの死者がいてそれを悲しむ人が10倍以上いるというのに。
友人の中にはまだ安否が確認できていない者もいる。

追記 3月23日
今朝の新聞の記事等を見ると、全てが納棺された状態で埋葬されたわけではないようだ。おそらく納体袋に毛布を巻いての状態で埋葬された遺体もあるようである。

食料もそのようだが、棺は数が入っても全てに行き渡っていない。それぞれの現場に届く、その過程に難しさがあるのだろう。

身元確認された遺体の場合、死体検案書がその場で渡され、それに親族が死亡届を出せば、正式な言い方をすれば「火葬・埋葬許可証」が出る。法律的には「火葬または埋葬(土葬)許可証」で東京等では土葬の可能性がほとんどないので「火葬許可証」という表示になっているが、意味的には同じである。

死亡届が出ると今は「火葬・埋葬許可証」が出る仕組みに普段はなっているのだが、この非常時には「死体検案書」だけで「死亡届」→「火葬・埋葬許可証」の交付という市町村の手続きが追いついていないのだろう。

新聞では「埋葬許可証」がなくても認める、とあったが検案後に死体検案書」をその場で警察医等が書くのであろうから、遺族の事務作業の軽減ではなく、その場に市町村の担当者が待機していないことからくる、自治体の仕事の軽減であろう。

なお、墓埋法では火葬も埋葬(土葬)も認めており、戦後に開設された墓地には「焼骨の埋蔵に限る」と火葬後の遺骨のみを納めることを前提にすることが多い。
また、自治体によっては内規みたいなもので「火葬のみ」としているところが多い。

墓埋法では墓地開設の許可は都道府県知事になっているが、今は市区町村に委任されているので市区町村が特例運用すればかまわない。

「埋葬を許可」という新聞報道があるが、墓埋法上では埋葬が禁じられていないのだから、墓埋法に「埋葬許可」の条件があるわけではない。厳密には「火葬・埋葬許可証」があれば火葬も埋葬も「墓地」として許可をすればできる。つまりこれは法律上のことではなく、自治体の運用の問題である。

今回は正式に「墓地」として自ら許可したのではなく、自治体が運用上「仮墓地」と設定したのであろう。

東北地方の火葬は遅れていたので、土葬への忌避の感情は少ないだろう。

問題は「身元不明者」の場合であるが、これは法律的には「行旅死亡人」の扱いで死体の存する自治体に責任がある。これは官報に記載するという自治体の作業負担がちょっとはあるので、ここいらは曖昧に処理するのだろうが、親族がいなくても(まだわからないから身元不明なので)自治体の責任で行う、のは法律的になんら問題がない。

問題は死者の尊厳がどうか、ということである。今回は身元が確認された遺体だったが、腐敗進行が地域の公衆衛生上の問題となるならば、身元がまだ判明しない遺体の埋葬(土葬)も出てくる。今回は身元の判明後のことを考えておかないといけないし、家族が皆溺死して後から名乗る人はでないケースもあるだろう。

東松島市の場合は2年と区切っているようであるが、一応は「白骨化」の期間を想定しているのであろう。白骨化の期間は、さまざまな条件で異なる。その後に二次葬として「火葬」を行う、という過程を想定しているのだろう。

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/