「改葬」に関する法令と若干の注釈―「改葬」問題のコンテキスト③

未だに改葬許可申請に、改葬先から受け入れ証明が必要と記載されていたり、改葬元墓地等管理者の埋蔵等証明が改葬承諾書みたいに誤解されている、と誤解されていたり、誤った記載をする説明が見られる。
そこで「改葬」に関する法令について詳しく書く。


「改葬」に関する法令

墓地埋葬法(墓地、埋葬等に関する法律)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO048.html

第1条第3項
「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。

第5条
埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。
   前項の許可は、埋葬及び火葬に係るものにあつては死亡若しくは死産の届出を受理し、死亡の報告若しくは死産の通知を受け、又は船舶の船長から死亡若しくは死産に関する航海日誌の謄本の送付を受けた市町村長が、改葬に係るものにあつては死体又は焼骨の現に存する地の市町村長が行なうものとする。

第8条
市町村長が、第5条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。

第14条
墓地の管理者は、第8条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない。

 納骨堂の管理者は、第8条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、焼骨を収蔵してはならない。
 火葬場の管理者は、第8条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、火葬を行つてはならない。
《注釈》

①第5条第1項の「市町村長」とは、第2項に規定されているとおり、「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」、つまり改葬元の墓地等の所在する市町村長。

②第8条第3項の規定が想定しているのは埋葬(土葬)された死体(の遺骨)を改めて火葬する二重葬を想定したものと思われる。

第5条第1項に「厚生労働省令で定めるところにより」とあるので、以下示す。

墓地、埋葬等に関する法律施行規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000024.html


第2条   法第5条第一項 の規定により、市町村長の改葬の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を、同条第二項 に規定する市町村長に提出しなければならない。

 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は、父母の本籍、住所及び氏名)
 死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)
 埋葬又は火葬の場所
 埋葬又は火葬の年月日
 改葬の理由
 改葬の場所
 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者(以下「墓地使用者等」という。)との関係
 
 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

 墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)
 墓地使用者等以外の者にあつては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本
 その他市町村長が特に必要と認める書類

第4条   法第8条 に規定する埋葬許可証は別記様式第一号又は第二号、改葬許可証は別記様式第三号、火葬許可証は別記様式第四号又は第五号によらなければならない。

《注釈》

③第2条第1項に定める市町村長に申請する「改葬許可申請書」の実例
・青森市
https://www.city.aomori.aomori.jp/seikatsu-anshin/kurashi-guide/saijyou-reien/documents/kaisou.pdf
・水戸市
http://www.city.mito.lg.jp/3500/3505/3539/p011604.htm
l
・世田谷区(東京都)
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/101/111/203/204/d00005291_d/fil/kaisoukinyuurei.pdf
・岸和田市
https://www.city.kishiwada.osaka.jp/uploaded/attachment/24943.pdf
・高知市
http://www.city.kochi.kochi.jp/soshiki/67/yuuenshinsei.html
・宮崎市
http://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/life/funeral/cemetery/577.html

少し多く例を挙げたのはランダムに選んだ「改葬許可申請書」では改葬先の墓地等の「受け入れ証明」という項目名はなく、第2条第1項6「改葬の場所」という項目名に統一されていて、改葬先の墓地等からの証明書が要求されていないことを例証するためである。

④第2条第2項1に定める「埋蔵(埋葬・収蔵)証明」
これは改葬元の墓地等から現に遺骨が存する事実証明であって、改葬元の墓地等が改葬を承諾するものではない。
つまり改葬元の墓地等は埋蔵等証明に離檀料等を条件にすることはできない。

⑤第4条に定められている「改葬許可証」別記様式第3号
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei17/pdf/01.pdf

⑥厚労省による墓地埋葬法の概要解説
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130181.html
墓地埋葬法を巡る厚労省、都道府県、市町村の関係がわかる。

広告

投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/