2年前くらいに書いた記事だが、今でも有効だろう。
「終活」は「就活」をもじって週刊朝日が名付けたことから言葉として流行した。
あまり好きな言葉ではない。
以下、が元の記事。
『SOGI』通信 No.69
「終活」という言葉は『週刊朝日』が2009年に連載した記事名「現代終活事情」が最初と言われる。
2010年6月に連載のまとめとして刊行された週刊朝日MOOK「2010終活マニュアル」のタイトルは『わたしの葬式 自分のお墓』となっているように「葬式」と「お墓」がメインテーマだった。
ちょうど2010年は島田裕巳『お葬式は、要らない』(幻冬舎新書)が刊行されてベストセラーになった年。
葬式や墓についての要、不要論が話題になった。
しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災が一気にそのブームを消し去った。現実の大量死を体験して、死者・行方不明者への想い、その家族の想いの痛切さ、リアルな死の衝撃の大きさを感じさせるものであったからだ。
そうした状況を背景に、東日本大震災の発生で発表が延期されていた経産省の「ライフエンディング・ステージ」に関する報告書が同年8月に発表された。
報告書では生前の「老」で抱える終末期医療、介護の問題から死後の葬式、さまざまな事務処理、遺族のケア、お墓、遺産相続まで続くステージについて、バラバラではなく一連のプロセスと考え、ネットワークを組んで消費者をサポートできるシステムづくりを提言した。
『週刊朝日』の葬式、墓中心の「終活」に異を唱えた一人がファイナンシャルプランナーの本田桂子さん。
中高年の遺言や相続の相談を手がけているなかで本田さんが提起したのが「老」の問題。
超高齢社会になった日本社会でのリスク、認知症、延命治療、老後の生活資金、財産分与…等を加えた「終活」を提起した。
本田桂子監修『終活ハンドブック』(PHP)が刊行されたのは、経産省の報告書発表と同年7月末のこと。
同年8月には「おひとりさま」問題に取り組んでいたフリーライターの中澤まゆみさん『おひとりさまの終活―自分らしい老後と最後の準備』(三省堂)が刊行された。
この公の報告書、民の本田さんらの提言にくらいついてきたのが司法書士、行政書士や保険関係の人たち。
「終活ブーム」を代表する終活カウンセラー協会は、2011年10月に第1回終活カウンセラー初級検定を実施。
『終活の教科書』(タツミムック)を2013年6月に刊行。
「終活」ブームは、ここ2年くらいに生じたブームである。
注視しておく必要があるのは、ここでの終活は「事業」である点。
そして終活事情についての講演会等が事業として展開されている点である。
そしてこの背景には戦後の大量のベビーブーマーが65歳以上の高齢者になりつつあることがある。こうした団塊の世代が「終活」や「エンディングノート」に関心を寄せてきた。
関心が高いことを証明したのが、2013年、「終活」をテーマとする季刊誌『ソナエ』(産経新聞社)を刊行、創刊号は約5万部を売り上げたこと。
「ペットの葬儀」や「おひとりさまの終活」を特集した第2号は創刊号を上回る勢い。
多くのデータが示すように、「関心がある」が3割程度はあるが、「実際に準備している」のは5%未満、という壁ははたして破られるのだろうか?